裏の厨房で反省してます

許して アタシのでたらめ人生

半年経つのに、まだこんなミス!

 

居酒屋の厨房で仕込みのバイトをしてる、富士子(45歳)です。
このバイトを始めて、もう半年も経つんですけど。

先週、久しぶりにやらかしました。


仕込みの指示が少なかったんで、割とサクサクと仕事を終わらせて、

「他にお手伝いすることありませんか」

なんつって、余裕たっぷりで、荷物を運んだりなんかして、

「では、終わったのでお先に失礼します」

って、すまして帰ってきたんですが。


家に着いてから、気が付いた。

豚肉の串のスモーク、やってなかった!!


ヤバイ。

超ヤバイ!!


豚串のスモークは、人気の目玉メニューだし、今日は週末。

絶対足りないよぅ。。。

 

慌てて、料理長(かっこいい)に電話しました。


「あ、あの。スモークをやってなくてですね…」

「今から、やりに来てください」

「…(絶句)」


マジかー!
怒ってるのかー、料理長(かっこいい)!
そりゃーそうだよなー…。


って思ってたら。


「冗談です。やっときますよ」


っつって、電話が切れました。

 


ほんっと、すみません。

 

イベリコ豚を上手くカットできないとか、カットしたエリンギのサイズが違うとか、

「イマイチ腕が悪いんだよね~」系のミスは、連日多発してるんですけどね。


まるっと、仕事をやり忘れるなんて!

なかなかのクリーンヒットっすよ。

ちょっと、あり得ないレベル。

 

 

いやー、バイト掛け持ちしてっから!
疲れちゃうのよ、おばちゃん。
許してー!


なんつって、通用しないッスよね。

反省してます。

ごめんなさい。

 

料理長(かっこいい)にだけは、嫌われたくないのに…。

ううう。

 

明日も厨房バイト、頑張ります。

 

 

大変! バイト掛け持ち!

 

新宿は、今日も雨です。
もしかして、世の中は梅雨だったりする? んなわけないわよね。


安い時給に生活の不安を抱える、富士子(45歳)です。

なんと、バイトの掛け持ち始めます!

 

あれは、GW前のこと。

あたしったらね。
友だちや昔の上司と新宿をフラフラ飲み歩いて、行く先々で、
「ココで働かせて!」「あたしを雇って!」って、暴れたらしいの。


幸か不幸か、騒いだ店って、友達が経営してたり、上司が常連だったりする店でね。


朝起きたら、テーブルに、携帯やらハンカチやらと一緒に
「都合のいい日を連絡して下さい」って、連絡先書いたメモが放り出してあった。

2枚も。


あんまり記憶がないんですけどね…。

どうやら、2箇所で働くことになったみたいです。

大丈夫か、富士子!

 

いやあ、深層心理って恐ろしい。
「もっと働かないとヤバイ」って、いう日ごろの不安の深さがしのばれますね。

 

なんつってる場合か!

どーすんのよ。
新しいバイトって、どっちも夜なのよ。
しかも、ひとつは居酒屋のホールじゃん…。
バカかあたしは…。
出来る訳ないじゃん。体力持たないよ。
無理だってー!!!


なんて、後悔しても後の祭り。
大慌てで予定を調整して、新しいバイト先に、シフトの連絡を入れました。

 

やるしかないよ、富士子。

友達や元上司に迷惑かけられないしね。

もう…、このまま突っ走るんだ!

 

 

それにしてもよ。
「あたしを雇って!」ってさ。

人生で、初めて口にしたと思うんだよね。
心で思ってても、なかなか、言葉に出来ないよね、普通。

こんな恥も外聞もない陳情(っていうのか?)が功を奏してバイトが決まるなんて。
言ってみるもんだわ。

 

そうなると、よ。

「あたしと付き合って!」なんてのも、言ってみたら、案外うまく行くんじゃないか?

って前向き話を友だちにメールしたんですけど、返事が来ませんでした。

 

 

って、そんなことはどーでもいーんだ!!

あああ、どうなるんだ、あたしの怒涛のバイト掛け持ちライフは!


今日は、昼間は厨房、夜はホールでバイトっす…。

 

ホールなんて、こわいよう。

平日だし、雨だし、暇だといいんだけど…。

もう、泣きたい…。

 

で、明日の夜は、カウンターの仕事です。

ホールじゃないんだけど…お酒作るの、やったことないし超不安。

 

ええい!

怯えてもしょうがない!

頑張るぜ!

おー!

 

 

おばさん、初めての撮影だったんだけどね…

 

今夜は蒸すわね。
明治通りを走る車の音が、水をはじいてるような響きなんだけど、雨かしら?

窓を開けるのさえ面倒くさい、富士子(45歳)です。


先日のこと。

バイト先で、アスパラの撮影しました。

お店のFacebookの、食材紹介記事用のお写真です。

料理長(かっこいい)は、あたしの「筍どうですか」っていう提案を一蹴して
アスパラを押してきてたんですけど、

「今日は、いい筍が来たから、一緒に撮影しましょう」

って、どっしりした筍を持ってきてくれました。

 

あら。あたしが筍って、言ったの、気にしてたのかしら(自意識過剰)

 

それはさておき、皮の辺りも瑞々しくて、本当に立派な筍だったよ!

さっすがー!料理長!

 

でもね…。

あたしはね、前日に、猛特訓リハーサルしてたのよ。
アスパラ撮影のシュミレーションっていうかね。

 

まず…
「アスパラ 画像」でググって、カッチョいいアスパラ画像をチョイス。


次に…
マルエツで、アスパラをしこたま買い込む。


そして…
お手本画像をじっくり研究。


で、ようやく…
背景を白っぽくして、照明を薄紙でくるんで光を柔らかくして、アスパラの穂先をちょっと濡らして、アップで撮影、シズル感を大切に!って方針が決まった。

いざ、三脚をセットして、練習撮影開始!

 

いやー、あたしって偉いわ。
どうよ、この抜かりないシュミレーションっぷり。


でもね、その割には、美味しそうな写真がなかなか撮れなくてねぇ…。

「何とかなるかなっ?」っていう写真が撮れた時は、もう日付が変わりそうでした。

やっとの思いでお風呂に入って、布団に倒れこんだわけですが。

 

なのに!

当日になって、まさかの筍参戦よ、奥さん!

ど、どうしようっ…!!

昨日のシュミレーション、根本から覆っちゃったんですけど!

 

 

料理長は、どこからか、雰囲気のある竹笊を持ってきて、チャチャッっと、
筍とアスパラをあしらった。
バランスよく配置された春の野菜たちの様子に、


「わー、かっこいい! さすがー!!」

って、思わず拍手しちゃったんですけど、そんな場合じゃないよ、富士子!

 


「で、どうします?」って、料理長に言われてね…。

「ど、どうしましょう?」って、なっちゃったよ…。

 

充分な光を取るには、照明が明るい厨房で撮影するしかなくって、
でも、野菜の全景を撮るには、うんと引かなくちゃいけない。
だけど、厨房は狭くって、引きが難しいの。

結局、上から撮るしかなく、しかも台に乗ってもあたしの身長では高さが足りず…。

 

なんと。

料理長に撮ってもらったよ……。

 

もうね、全く、想定外の展開。
競馬だって、こんな展開めったにないよ!
(そういや、昨日のビクトリアマイル、2070万馬券出たね)

 


写真の撮影って、シュミレーションだけじゃダメなんだよね。
現場の変化に、臨機応変に対応できなければ、意味がない。
そうするには、あたしは絶対的に経験不足。

 

ってかね、あろうことか、料理長にシャッター押させるって、どういうこと?

あんた、パートのおばさんでしょ? あり得ない暴挙よ!

 

あたしの中の、まともなあたしが、割と真剣に怒ってます。

 

結局、雰囲気も何もなく、極めて素っ気無い、普通のスナップ写真ができました。


あーあ。

料理長が、せっかく丁寧にあしらってくれた野菜、きれいに撮りたかった…。

残念だなー。

しょぼーん。

 

でもね、料理長、「携帯の写メより、ずっといいですよ」って言ってくれました。

なんか微妙ですけど、気遣ってもらって嬉しかったです。はい。

 

応援してくれてた皆さん…。 

ダサい結果で申し訳ないッス。

 

今後も、頑張って練習を続けます。

諦めないぞ。

前に進むのを、やめたくない!

 

 

おばさんバイトのくせに、写真撮らせてって言っちゃった

 

日差しが、だいぶ夏っぽくなってきたわね!
靖国通りの信号待ちが正直しんどい、45歳の富士子です。

今日も、信号が青になるまで、ゴールデン街の入り口あたりの日陰に隠れてました。
超怪しい感じなんですけどね。
ま、新宿は怪しい人ばっかりだから、ノープロブレム。
よかったわ、青山とか目黒とかに住んでなくって。
(住めねえ、っつーの)

 

思い立ったらすぐに体が動いちゃう歴、早45年。

バイト先の居酒屋のお料理を、写真に撮りたい!
料理長(かっこいい)のお料理を写真にとってフェイスブックに使って欲しい!

って、急に決心して、密かに写真の練習を始めたんですが…。

これって、キッチンの誰も知らない、あたしの秘密大作戦だったんですが…。

 

この前、屋上で、料理長が一人でタバコ吸ってたのね。

そんで、急に思い立っちゃってね。

言っちゃったよ!!


「写真、あたしに撮らせて下さい」って。

 

したら、料理長、ふーって、タバコの煙を吐いてから、「は?」って言いました。


そのね、ふーっ、っていう間が、なんともいえない感じでね。

「俺は、こいつの対応しなきゃダメなのか?」っていうね、逡巡、っつーんですか?

そんなのを感じました。

 

「いやあの、フェイスブックあるじゃないですか。あの、お料理の写真なんですけど」

って、最大限頑張って説明しようとしたんですけどね。


料理長、おばちゃんの話は整理しながら聞かないと、って思ったらしくて。

「富士子さん、そもそも写真撮れるんですか? 仕事でやってたとか? 趣味?」

って、まずその辺から質問されちゃいました。

 


「あ、前の仕事で、キャラクターグッズとかホームぺージで紹介するため、撮影はやってたんです、一応」

「お、お料理は撮ったことないんですけど、照明を何とかできれば、多分なんとか」

「いえ、あ、あの、上手じゃないんですけど、だから、もっと明るく光を当てたらどうかなって」

「うちに使ってない一眼レフがあるから、それを使えばいいかなーって、何となく」


って、すっかりしどろもどろ。

 

料理長は、だまって缶コーヒーを一口飲んでから、

「別にいいですよ。そこまで言うなら。」


って、ちょっとあやふやな笑顔で言ってくれました。


良かった!

ひとまず良かった!


うまく話せなかったけどね、一番伝えたかったことは言えたよ。


「せっかく美味しいお料理だから、って思って」


写真を撮る動機って、ホント、これしかないんだもん。


「ありがとうございます!

写真撮るとき、教えて下さい。カメラ持ってきます!」


って、満面の笑顔(になってたと思う)で答えて、スキップでうちに帰りました。

 

わーい!

「撮らせてもらえるかわからないけど、練習」っていう気持ちでやってたけど、

「撮らせてもらえるんだから、張り切って練習!」って、何倍も前向きになったよ!

 


問題は…


湯気の立つお料理や、てかりの多いお肉みたいな、ハードル高いのが来たらどうしよう。


ってことです。

そういうのが来ないように、手を打たないと!

 

 

翌日。

「筍とか、旬の食材はどうですか。撮りやすいし…」

って、さりげなく誘導してみたら、

「アスパラの方が、旬かもしれないですよ。うち、筍はだいぶ前から扱ってるし」

って答えが返ってきまして。


初回の撮影は、アスパラって、ことになりました。


イエーイ! 

 


がっかりな撮影の様子はまた今度!

 

今から洗濯物干して、バイト行ってきまーす!

 

 

おばさんバイトのゴールデンウィークは…

 

明日、東京競馬場に行く人、手を上げてー!
G1レース、NHKマイルカップがあるよね。
わくわく。

ま、富士子は行かないけどね…。
天皇賞で大敗を喫したので、しばらく大人しくしてます。
しょぼーん。


居酒屋の厨房でバイトしている富士子(45歳)です。
自称フリーターです。


時給生活のフリーターにとって、カレンダーどおりの休日はあまり意味がありません。みんなが休む日に休まない生活だったりします。
なぜなら…

休日こそ、時給が高かったりするからです!

わお!

 

なんで、年末年始は、フル稼働でシフトを入れて稼ぎましたが。このGWは、カレンダーどおりに休んでおりました。

何をしてたかった言うと…


・一眼レフカメラを使いこなす練習
料理長(かっこいい)の作った料理の写真を撮るから、フェイスブックで使って欲しい!
っていう、ひそかな目標に向けて、猛特訓してたよ。つっても、モデルになるまともなお料理がなくてね。
お茶漬けとか、おにぎりとか、手早く用意できるもので写真とって見たんだけどね、
時間が経つと、干からびて不味そうになっちゃうのよ。
そうなる前に!っつんで、途中で食べちゃったりして、全然進歩しなかったわ。
最後は、お皿に人形を乗っけて、「顔の部分にピントを合わせる練習」とかしてました。
超楽しかったんだけどね。今思うと、有意義な練習だったのか、ちょっと疑問。

 


・草刈り
大都会新宿に住んで20年近く。多くの人に、富士子はシティ派(死語?)と思われていますが、実は、成田空港の近くに、小さい田んぼと畑を持ってます。
そこで、家庭菜園の真似事をしてるのよ!
どう、びっくりした? どうでもいい? あっそ。
ここ2年くらい、気持ちに余裕がなくって放置していたのですが、今年は、バイトも決まって人生ばら色…の手前の、薄いピンクな生活なので(オエッ)、野菜を育てることにしました。どうしても、トマトがたわわに実っている様子が見たくなったので、秋採りのトマトを植えることにしたわ。
ビニールハウスは、枯れ草と雑草と竹が入り混じって生えてて、カオス真っ盛り!
全部を、ばっさばっさと鎌でやっつけたぜ。イエーイ!よくやった富士子!
よくわからない虫に刺されるわ、顔がかぶれるわ、、腰が痛むわ…
それはそれは、充実のGWでございました。


そんな楽しい連休だったんですけど、常にあたしの心にあったのはね…

「今頃、厨房のみんなはどうしてるかなぁ」

ってことでした。


キッチン男子の天使くんが魚を捌いているところや、ルドルフ先輩が鍋をかき回しているところ、アントニオが炎を立ててフライパンを振っているところ。
料理長(かっこいい)が、静かに包丁を使っているところ。

そんな様子が思い浮かんで、そのたびに嬉しいような、頼もしいような、不思議な気持ちになりました。

決して「休まずに厨房で働いてればよかった」っていうことでもないの。

厨房は大好きなんだけど、他の時間ももちろん大事だもの。
ただ、厨房のことを思うと、なぜか元気になるのよ。
他のことにもやる気が出るし、気持ちが明るくなるの。

こういうものを「よりどころ」って言うのね、きっと。


さーて!
バイト本格復帰は来週からです。
頑張るぞー!

 

 

おばさんバイトは、日傘愛用してるけど…

 

新宿は晴天でした。

半袖率は20%くらい。

もうちょっと日差しが強くなると、日傘が手放せない富士子(45歳)です。

居酒屋の厨房でバイトしてますけどね。

唯一の、日傘ユーザーです。多分。

 

そんなわけで、夏というのは、アダルト女性に大変厳しい季節。

 

そもそも、どんなに暑くても、Tシャツを着にくい。

木綿のTシャツ生地ってさ、首の皺とか肘のたるみを、くっきり目立たせるのよね。白いTシャツなんて、残酷なことこの上ないですよ。アダルティ(って英語ある?)なデザインや素材のシャツもあるんだろうけど、アダルト女性向けのブランドってだけで、ちょっと高いしさ。

 

それからね、日差しが眩しい。

年々、眩しいのに弱くなってる。サングラスが必要なレベル。オシャレじゃなくていいですよ、全然。UVカット機能があればOK。これがないとね、ほんと、目を細めて歩く羽目になります。若い頃は、夏の日差しの中を闊歩したもんだけどね、今は、あまりの眩しさにヨロヨロ歩いてる。

 

そうなると、日傘も大事ですよ。

あたしはね、3本持ってるわよ! 「ムーンバット」っていうメーカーの日本製の日傘が一番のお気に入りよ。柔らかい布に繊細な刺繍がほどしてあるんだけど、広げたときの大きさがゆったりしてるから、いかにも日差しから守ってくれるって感じで頼もしいのよ。やっぱね、可愛いだけじゃダメなのよ。

 

あとね、水筒持ち歩き。

小さいサイズの水筒ってホント便利よ。この数年で、品揃えが充実したわよね。新宿だと、ビックロに行けば、機能重視タイプが各種そろってるわよ。オシャレなものなら、マルイ、ルミネ、無印なんかに行けば、よりどりみどり。あたしは、麦茶派よ。丁寧かつ慎重に麦から煮出して、よーく冷やして、氷をちょっと入れて水筒にセット。いつでもどこでも、手軽に水分補給よ。暑くて眩暈がすることあるからね。水分大事です。

 

そうなるとね、あとはハンカチです。

これまた、50枚ほどコレクションがありますのよ。LIBERTYプリントが好きなもんだから、買い集めてたらどんどん増えちゃって。「いせ辰」の手拭いハンカチとか、今治産の5重ガーゼハンカチとか、色々あるわ。自分で書いてて思ったけど、夏のハンカチにこだわりがあるって、おばちゃんならではの現象よね。若いときは、何でも良かったもん、可愛ければ。今は、求める機能のレベルが高くなっちゃって、何でもいいってわけにいかないわ。バックに入れて嵩張らず、汚れにくく、吸水性が高く、度重なる洗濯にも耐え、しかも見栄えも良くないと! 

水筒を持ち歩いている上に、日傘まで差してるとね、荷物が重くて、当然汗もかくわけよ。だから、かなり重要アイテムです。ハンカチ。

 

 

で、問題はね。

これらをフル装備でバイトに行っていいものか?

ってことよ。

 

あたしのバイト先は居酒屋のキッチンだけどね、30代が殆ど。ホールにいたっては、20歳が普通。20代じゃないわよ、20歳よ。この前、ホールの女の子に、お母さんの年齢を聞いちゃったんだけどね。あたしとタメでした。わお。

 

娘や息子世代が働いてる!って割り切れれば、問題ないの。わかってる。

問題なのは、キッチンのメンバーが30代で、世代差がさほど大きくないってことよ。

 

微妙に、

ちょっとだけ、

ほんのわずか、

あたしが上なのよ。

 

このわずかな差が、サングラス&日傘&水筒&ハンカチ装備を招くだけなの。

だからね、「世代が違うから」って割り切れないのよ。

だって、本当にわずかな差じゃない!

 

この装備が、本来わずかなはずの差を、すごく、際立たせる。

大問題です。

 

なんでか、って。

料理長(かっこいい)に、「うわ、本格的!」って、思われたくない!!

「やっぱ、おばさんだよなー」って、再認識してほしくない。

 

いや、仕事ぶりで充分バレてるんだけどねー。

記憶力悪いしスピードないしねー。

 

ま、それはそれとして。

 

フル装備していいものか。いくつか解除するべきか。

解除して、ぶっ倒れない自信はあるか。

 

夏本番を前に、本気で悩んでいます。

 

おばさんには、デジタル一眼レフは手強かった


新宿は、区議選の投票日だったよー。
でもって、東京競馬場ではフローラステークスが開催!
あたしったら、先週の皐月賞に続いて、今回も2着を当てちゃったよ!
1着を当てないと、配当金はもらえないよ…。

 

さて、あたしの「お料理の写真を撮るぜ大作戦」。

さっそく、デジカメの一眼レフを引っ張り出してきましたよ。
家族の写真でも撮ろうかと、大昔に購入したEOSなんですけど。
当時、買っただけで満足しちゃってねー。
普段使いのiPodやコンパクトカメラで充分だったし、
結局、この一眼レフは、触ったこともないまんま。

電源を入れてみると、モニター画面には見慣れない記号やマークがいっぱい。

大丈夫か、富士子。

 

でもね、あたしだってね、
写真を撮ったことはないけど、見たことはあるわけ。

小学校のとき、病気で長く入院してたんだけど、そのときの心の友が、お料理の本。
くまのプーさんのお料理読本」「メアリー・ポピンズのお料理教室」はバイブルよ。
「ラブおばさんシリーズ」とか、バーバラ寺岡の本も人気だったわね。
作らないまでも、お料理の絵や写真を眺めて、育ったわけ。

20代に、雑誌の編集のお仕事をしてたときは、お料理ページも手伝ったわ。
出来上がった料理より、写真のほうがずっと美味しそうなのが不思議だったもんよ。

今でもね、大好きなお料理ブログがいくつかあって、毎日飽かず眺めてるの。

料理を食べるのも好きだけど、美味しそうな写真を夢見心地で眺める、っていうのも、大好き。

 

写真の力って、とっても大きいのよ。

一番重要なのは、そこをわかってるかどうか、ってこと。
写真の力を信じていること、撮りたい、っていう気持ちや、自分にとって良い写真っていうのがはっきりしてることが、一番大事なのよ。

だからね、あとは、撮る技術を頑張って覚えるだけ。大丈夫。うん。


って、自分に’(無理やり)言い聞かせて、深呼吸。
記号とかマークとか、もういいから、とにかくやってみましょ。

まずは手始めに…、と、おやつのゼリーを撮ってみました。


そしたら!

いきなり、画面が真っ暗。
何回撮っても真っ暗。
ベランダに出て、西日に当たってる植木鉢を撮っても真っ暗。

蓋も外してるし、電源も入ってるのよ。
なのに、暗くしか写らないのよ!

なんで?

マニュアルを引っ張り出して、調査すること20分。

絞り優先とシャッタースピード優先は違う、ってことが書いてあって、
そのボタンを変えたら、明るくなったんだけど。

 

もう…
さーっぱり、意味がわかりません!!


きれいに撮る、以前の問題。
うっかりシャッターすら押せない。
写真の理屈がわかんない上に、カメラの使い方も超めんどくさい。


AFが絞り優先で、TVがシャッタースピード優先のことらしいんですけどね。
AFって、オートフォーカスのことじゃないの?
TVっつったら、テレビでしょ、普通。

って、おばちゃんは思うわけ。


いちいち「意味不明じゃん」って突っ込んでるもんだから、
なかなか先に進まなくて、結局、まともに一枚も撮ることができず終了。

やれやれー!

 

あたしが愛する料理ブロガーの皆さんは、いったいどうやって撮影してるんだ…
ただでさえ、複雑なお料理をつくっているというのに…
しかも文章まで書いて、ブログのツールも使いこなしてる。

 

あたしゃ、マニュアルを読むだけで、くたびれたよ!(C)ちびまるこちゃん

 

大丈夫か、富士子。

 

ひとまず、ネットで初心者向けの解説ページを読んでみっか。
長い道のりになりそうだわー。

がんばるわー。

 

おばさんバイト、小さいけど目標ができたよ!

 

あたしの、時給950円バイト生活。
もう、半年が経ちました。

あたしね、高校生のときにも、アルバイトをしたことがあるのよ。

おしぼり屋さんで、おしぼりを袋につめる仕事。袋詰め自体は、機械がやるの。あたしの仕事は、洗濯機で洗ったおしぼりを二つに折って、ベルトコンベアーに乗せること。すると、機械からガシャン!って、袋につめられたおしぼりが出てくる仕組み。

バブル時代だったからね。すかいらーく藍屋みたいなファミレスでも、布のおしぼりを使っていたのよ。信じられないでしょ。工場は、土日祝日もフル稼働だったわ。


あれから、30年以上。

当時と変わらない時給で働く、今のあたし。

厨房の仕事は大好きだけどね。でもね、手放しで、好きって言えないところもあるの。


だって、希望がないもの。
いつまで経っても仕事が遅いあたしに、のびしろはゼロ。これ以上、何かを任されることもなく、ただ、椎茸や獅子唐を串に刺して、みんなが仕事をしているのを、ボーっと見ているだけ。


本当に、これでいいの? 富士子?

って、思わないわけでもないのよ…。

 

で、考えたわ。

時給が安いことや、将来がないことを乗り切るのに必要なのは、
モチベーションってやつじゃないかしら?

厨房で、魔法のようにお料理が作られていくのが魅力!
っていうのは、このブログでいつも書いてる通りなんだけど…

そういう、気分みたいなことだけじゃなくて…
ここで働き続ける、もっと確かで、具体的な動機が欲しい。

 

西日の当たる部屋で、ひとりで、そんなふうにゆっくり考えたの。

 

あたしは、ここの美味しいお料理が大好きよね。
ってか、自分が働いているこの店が、好きよね。
だから、フェイスブックなんてものも、割とマメにチェキしてるよね。

初めてみたとき、どう思った? 富士子。
フェイスブック、すんごい、適当じゃなかった?

なにがって…

写真が、よ!
料理長(かっこいい)が作った、お料理の写真よ!

ピントも合わず、構図もなく、第一、不味そうに見える。

これさ、悲しかったよね、見たとき。
見ちゃいけないものを見たと思って、とっさにスクロールしてたよね。

富士子はわかってるよね、キッチン男子たちのこと。みんな、お料理は上手でも、シャイで照れ屋。自己アピールなんて大の苦手。フェイスブックだって、本社の経営陣に言われて途方にくれながらやってる。だから、ケータイで簡単に撮った写真でも、疑問を持たずにUPしてる。

よく思い出して、富士子。

あの時、ふつふつ湧き上がってきたのに、心の奥底にしまった気持ちを。

あのとき、どう思った?


そう。

「あたしが、何とかしたい!!」

って思ったよね。


でも、すぐに打ち消したよね。

あたしは、しがない主婦パート。社員でもない上に、仕事も出来ない。料理長も店長も、これでよしとしてるフェイスブックを、何とかしたいなんて、とんでもない!

って、すぐに封印したんだよね。

 

でもね、よく考えて、富士子。

あんた、なんで、この厨房で働いてるの?
お金のために働くならば、もっと時給がよい仕事を選べばいいよね。
なのに、そうしてない、ってことはさ。

 

厨房が大好きなんだよね。ここの料理が好きなんだよね。

なら、大好きだからできることが、あるんじゃないの?

せっかく、大好きな厨房にいるのに、時間を切り売りするバイト生活でいいの?

 

お金のために、好きでもないことを仕事にしてる人はたくさんいるわ。
仕事を好きなんだと、自分をだまして働いている人もいる。

その点、富士子、あんたは恵まれてるんじゃない?

イヤでも向き合わざるを得ない、低い時給のおかげで、はっきりしたのよ。
好きでやってる、って。

 

だったら、よ。

時給が上がるわけでも、評価されるわけでもないけど、
好きなものに、正直になってみるのはどう?

ダメでもともとよ。失うものも何もないわ。

 

そんなふうに、薄暗い西日の当たる部屋で自問自答していたら、
なんか…

だんだん、自分の気持ちがはっきりしてきました。

 

料理長の作る美味しいお料理を写真に撮って、フェイスブックにUPしたい。
みんなに、美味しそう、って思ってもらいたい。

 

うわー、なんて大胆な。
そんな提案、「ダメ」って言われるかもしれないけど、
「はあ?何で?」って不審がられるかもしれないけど、
「プロじゃないんでしょ、別に」って突っ込まれるかもしれないけど…
「今のままで問題ないですから」って却下されるかもしれないけど…

そうなったら、すごく凹むと思うけど…


そしたらさ、
「好きなんです、ここの料理。美味しそうに撮りたいです!」
って、正直に言えばいいよ。
かっこ悪くても、気にしない!

 

確かに、写真なんて素人だよね、富士子。
だったら、まず、ウチで料理の写真を撮ってみよう。

やってみなくちゃ、わからないもの。

よし!!

 

あたしは、お料理が上手な人のブログを毎日見てるわ。みんな、お料理の写真が上手で、どれも美味しそうなのよ。見ているだけで幸せになるくらい。
あたしも、そんな先輩たちの真似をしてみよう。

よーし!!


あたしったら、いつの間にか立ち上がってた。
西日だらけの部屋の中で、一人で、なんかすごく嬉しくなってた。
ささやかで、小さい、あたしだけの目標ができたわ!

いつか、タイミングを見て、「フェイスブックのお料理の写真、撮らせてほしい」って、頼んでみよう!

だって、みんなに、美味しそう、って思ってもらいたいんだもん。


頑張れ、富士子!


あしたもバイトだわ。
どんな一日になるかしら。

あきらめないわ!

 

おばさんバイト、少ない収入を嘆く

 

新宿も本格的に春。

昨日までの変な天気が嘘のように、今日の日差しは暖かい。


雨にも負けず、風にも負けず、バイトに励む富士子(45歳)です。

 

バイト生活も、そろそろ六ヶ月目。
時給950円でも根を上げず、土日も働き、
定期預金を解約した残金を切り崩して、食いつなぐ毎日。


こうみえて主婦なんで、稼ぎ手があたし一人ってわけでもないんですが、
そっちの稼ぎ手は、あてにしてないの。

あたしは、あたし一人の、自立できるだけの収入が欲しいです。


でも。
今の厨房のバイト収入では、とてもやってはいけない。

職を変えるなら、一日も早く、就職活動をしないとマズイ。
だって、今年であたし、46歳になるのよ!

仕事はどんどん減る一方!


でもね、あたしはね…

今のバイト、辞めたくない!

ずっと厨房にいたいのよ。


居酒屋の厨房バイトは、わりと軽い気持ちで選んだ仕事だったの。
死ぬまでに、一度は、お料理するところで働いてみたいなー
って思ってたけど、本業にするつもりは全くなかったし。

それまでは、正社員で採用してくれるところを探してたけど、
やってた仕事が、作家の事務所っていうレアな場所だったこともあって、
職歴を生かせる職場が、なかなか見つからなかった。


そもそも、あたし、クビになってるし。
あたしをクビにした女社長は、富士子ネガティブキャンペーンを張ってるし。

仮に職場があったとしても、狭い業界のこと。

職務経歴書に、作家の名前を出した時点で、
「ああ、辞めさせられた人ね」って、すぐに調べがついちゃう。

そんな恐怖もあって、前向きに職探しが出来なかった。


いよいよ、来週からお米がない!
何でもいいから仕事しないと、って追いつまったときに、
履歴書不要で面接してくれるバイトを、ネットで見つけたの。

で、とっさに応募したのが、今の厨房。


多少、時給が安いのも、その時は気にしていなかったわ。
とりあえず、働くところができてよかったーって、安堵のほうが強かったしね。

 

あれから、早半年…

思いがけなく、楽しいのよ、この厨房のバイト!
キッチン男子たちが、お料理をする姿が、超かっこいいし。

他のどこへも行きたくない!
ずっとここで働いていたい!

でも、時給が安くてやっていけない…。


あああ。
このジレンマ。


どうして、飲食業って薄給なんだろう…。
どうして、事務のほうが時給が高いんだろう…

あたしには、お料理の仕事のほうが尊いように思えるけど…

 

厨房の仕事は、肉体労働と思われてるんだろうか。
事務の仕事が、頭脳労働ってことになってるんだろうか。


解せないッス。

 

なにはともあれ。
あたしの目下の課題は、「もうちょっと収入を上げる作戦を考える」です。
厨房バイトを続けながら、ね。


そーねー。
だいたいねー、20万円あれば、ちょっとは息がつけるなー。
夢のまた夢だけどねー。


明日もバイト、頑張るわ!

えいえい、おー!

 

 

キッチンの仕事って、職人仕事

昨夜は、明治通りの方が騒がしかったわ。
酔っ払いが盛り上がってたみたい。

新宿に住み続けるコツは、音と光を気にしないことよ。

この前、いきなり、近所に屋外看板が設置されたの。
夜になると、煌々とライトアップされるのよ。
部屋にも光が入ってきて、あたしの枕元まで明るくなったのよ。
ビックリよ。

朝おきるために、カーテン開けて寝てるんだけどね。
どうにも、まぶしいのよね。

しょうがないから、満月が10個出てる、って思うことにしたわ。
あたしは、月が10個見える星の女王様、って設定よ。

うむ、苦しゅうない。

 

昨日もね、居酒屋厨房のバイトに行ってたんですが。

まかない当番は、金髪バイトのキッチン男子・天使くん!

わーい!

お好み焼きだったよーん。


広島出身の天使くんが作るお好み焼きは、みっちりと固め。
豚も蛸も入ってて、歯ごたえも充分。
卵を薄く焼いて、その上に焼いた生地を乗せて、ギュって押してた。
その辺が、天使くんの広島っぽいオリジナルテクニック!


昨日は、仕込が早く終わったので、
あたしは、のんびりと天使くんがお料理をするのを眺めました。

 

手早く、リズミカルに作業をする天使くん。

 

卵を割り入れるのも、フライパンを振るのも、
ソースやマヨネーズをかけるのも、途切れない流れるような動き。

 

どんどん、ご馳走が出来上がっていく様子にワクワクして、
手伝うのも忘れて、ずっと見惚れていました。


もうねー。

たまに、こういう時間があるから、厨房のお仕事が好きです。


料理の仕事っていうか…
職人さんのお仕事っていうのかな。

そんな仕事ぶりを、すぐそばで見ていられる。


あたしが前に働いていた、作家の事務所の先生も、やっぱり職人でした。

あたし自身は、著作物を映画やグッズにするための事務の仕事をしてたけど、
先生は、そういうビジネスには全く興味がなくて、
作品を作ることだけに値打ちを置いているようだった。

あたしも、先生が描いている様子が好きだった。

 

著作権ビジネスは、刺激的でやりがいのある仕事ではあったけど、
一番、満ち足りて幸せなのは、先生のそばに座って、
先生が描いているのを見ていることだった。

手を動かして何かを作ることを、すごく尊い、って思えた。

先生はお酒浸りで、めったにペンを持つことはなかったけど。

 

そんなこともあって、
あたしは、商売人よりも、職人さんに敬意と憧れを持ってます。


とりわけ、
厨房で働く人、お料理を得意とする人、が好き!


キッチン男子たちが料理している様子は、本当に魔法みたいだよ!
魔法使いが作ったお料理、みんなに美味しく食べて欲しいー!


今日もバイト頑張ります。
土曜日だから、仕込み地獄だあぁああ。

 

 

 

おばさんバイトは、まかない食べるだけ

春ですね。
どっか行きたい。

時給950円生活でも行けるとこって、ないかなー。
さすがに海外は無理かなー。

やっぱ、新宿御苑で日向ぼっこかなー。
悪くないよねー、うん。

 

独り言が多い、富士子(45歳)です。
最近、テレビにも話しかけるようになっちゃって、
おばあちゃんの霊でも憑いたんじゃないかと思ってます。

 

昨日、仕込みの傍ら、まかないを作りながら、
ルドルフ先輩がつぶいやいたんです。


「そうだ、富士子さんにも、まかない当番に入ってもらおうかな」


ええええっ! 何言ってんの?

やだよ!

自分の仕込みで精一杯なのに、みんなのご飯作るなんて、無理ゲー。

っていうか、これ、ルドルフ先輩の独り言だよね?

聞こえなかったことにしようっと。

 

ってことで、黙って、豚肉の串をスモークしてたんですが。

 

再度、

「人数が少ないから、まかない当番が回ってくるの早くて、大変なんだよね」

って、つぶやきが聞こえてきた。

 

今日、独り言が多いッスねー。

 

なんて言うわけにも行かず、聞こえないフリも出来ず、

「え? 何か言いました?」

って、小さめの声で言ってみました。

 

「いえ、別に」

って、受け流してくれるかなー、って期待してたけど、甘かった!


「富士子さん、まかない、よく食べるじゃないですか。たまには作らないと」

って、はっきり言われちゃったよ!


まずい。
全力で逃げなきゃ。


「いやいやいやいや!
 あたしが作ったら、食べるのが6時くらいになっちゃいますってぇ!」


って、かなり大げさに言ってみた。


そしたら、ルドルフ先輩があっさりと

「そっか」

っつって、会話が終わった。

 


あら。

予想を上回る効果じゃない。

 

あたしが作ったら食べるのが6時になる、って…


そんなにリアリティがあったかしら?
あたし、そんな、仕事が遅いかしら!?


わかっちゃいたけどねー。

ショック!

 

今日もバイト。
すんごいスピードで、仕込みやっちゃうよ!
見てろよ!

 

 

おばさんバイト、インタビュー受けたよ!

 

今日の新宿はちょっと暖かい。
パーカーいっちょでバイトにGO!


【あらすじ】
居酒屋厨房で働く富士子(45歳)は、
悪の秘密結社(本社)から、求人雑誌に掲出する募集広告のために
インタビューを受け、写真撮影にも応じるよう指令を受けた。
お店の平和に全く関係ない指令に、戸惑いを覚える富士子。
ほうれい線が写真にバッチリ写ることを恐れながら、
仲間のいる厨房へと戻っていった。

 

前回、本社の方針について偉そうに吼えたんですが(すいません)、
あたしが一番困ったのは、写真撮影する、ってことなんです。


やだよー。
話だけならいいけど、写真はやだよー。

だってね。

おばちゃんね、普段、スッピンなんだよー。
スッピンで撮影なんてやだよう。
ほうれい線も、眉間の皺も、目の下のくすみも隠しようがないじゃーん。

かといってね。

撮影のためにお化粧もできないのよぅ。
「あ、おばちゃんやる気出してる」って、キッチン男子に思われちゃうじゃん!

イヤだぁ!!!
恥ずかし過ぎる!


うううう。

もうあたしはね、ここでは、二度とお化粧が出来ない体なのよう!

 

 

厨房で、料理長に、

「絶対やです、写真はー。
人前に出ないからこの仕事を選んだんです。やですー。」

ってダラダラ愚痴を言ったんですよね。

そしたら!


料:「イヤって言えばいいですよ。無理には撮らないでしょう」

不:「そうでしょうか。話と写真がセットだから、って押してくる気がします」

料:「じゃあ、取材の人に断ればいいですよ」

不:「はっきり断っていいものでしょうか、社外の人に。
   前の職場ではっきり色々断って、物議を醸したことがあって」

料:「じゃあ、『料理長が断っていいって言った』って言えばいいですよ」


ちょっと…

料理長…

な、なんてかっこいいの!

 

あまりのかっこよさに面食らって、

「え、あ、でも…」

みたいになっちゃった。


ここは「ありがとうございます」だろ、富士子。

照れてる場合か。

 

さて、インタビュー当日。

料理長はお休みでしたが、前日に「本人は写真嫌がってますんで」って
電話で荒井注(仮名)に言っといてくれてました。(わーお!)


バイトルの人は、20代前半の、いかにも若手の新人営業さん。
時間通りにいらしたので、店長が席にご案内。


同席して欲しい、と頼んでいた荒井注(仮名)さんは来ず。

ま、しょうがないか…。

ってか、注さん、いないほうが良いかも。
面と向かって、写真撮らせろって、言われたら怖いもん。

と思っていたら!


店長が、

「いやいや、注さん来ないとダメでしょ」って、

本社に対して、まさかの呼び出し!


あらあらあら。
店長ったら、頼もしいじゃないの。


って感心してる場合じゃないわ。

注さんが来る前に、バイトルさんにダメ出ししちゃえ!
急げ、富士子!


バイトルさん、客席で一人座って、注さんと富士子の登場を待ってる。

あたしは、ポロ葱を運ぶついでにちょっと挨拶…
という風を装って近づいた。


「あの、富士子といいます。今日はお話だけってことでお願いしてたんですが…」

きょとんとしてから、慌てて挨拶を返すバイトルさん。

「あ、初めまして。今日はよろしくお願いします。」


あたしも慌てて、

「あの、お話だけで、お写真はない方向でお願いしてたんですが、いいでしょうか」

って、単刀直入に早口で返すと


「ああ、そうかもしれないと伺ってました。大丈夫です。」

って、バイトルさんが。

ああああ、良かった!

 


荒井注(仮名)は、30分遅れでやって来て、

「いやあ、僕がいたらね、自由にしゃべれないだろうから、
 席を外しとくんでよろしく」

っつって、どっか行っちゃった。

まあいいや。

 

インタビューは、

・働いてよかったことは?
・主婦として働きやすい点は?
・厨房の仕事が家事に役立ったりしますか?

っていうような内容。


・短い時間だけなので、自分の時間は確保できる
・家事との両立は充分可能
・プロの仕事を間近で見られるのが醍醐味
・調理法のいくつかは、自宅の料理にも役立つ

というようなことを答えました。


あたしが一番時間を割いてしゃべったのは…


「この店、とっても丁寧にお料理してるんですよぉ!」ってこと。


コロッケは毎日、じゃが芋と里芋を皮から茹でて作ってるんですよ。
皮から茹でると風味が全然違うんですよ、知ってました?


バニラアイスも手作りですよ。
しかも、マダガスカル産のバニラビーンズを使ってます。
ニューギニア産より高いんですよ!


お刺身のつまの大根って、機械で作ってると思ってたんですけどね。
違うんですよ、ここでは!
かつらむきして、包丁で作ってるんですよ。
とりわけ、料理長のかつらむきは芸術的な薄さでね。


などなど…

 

手間をかけて手作りしている様子がどんなに魅惑的か、熱く語ること20分。


バイトルさんから、

「えっと、要するに、プロの仕事を見ることが出来るわけですね」と

一言でまとめられて、はっと我に返り、インタビューが終わったのでした。

 


帰り際。

荒井注(仮名)が、バイトルさんに向かってしゃべってた。

あたしがいないと思ってたらしくて。


「写真、どうだった? だめ? どうする?

そっかー、困ったね。

別店舗にも、主婦いるけどね。

そっちあたってみる?

じゃ、そうしよ。

で、今夜だよね、飲みでしょ。8時半ね。

まったくさー、もっと早く出来なかったのー、遅いよー。

8時半っていったらさー、もう、ウチに帰ってる時間だよ。

ま、いいや、せっかくだからね。どうもね。

んじゃ、また後ほど!」


って、すんごい軽い感じでトークしてた。


無事に取材が終わって、気が軽くなった富士子には、
そんな注さんの軽いノリが、妙にフィットしちゃってね。

なんか、親しみを感じました。


昨日は悪く言ってごめーん!

 

 

 

 

それはさておき。


インタビュー中、あたしが一番アタフタした質問が、これ。

「包丁の使い方など、うまくなったりしましたか?」

 

うっげー!

うまくなったり、してませーん!


動揺のあまり、5秒くらい沈黙してから、

「え、えっと、あたしは、ちょっと、ちょっと不器用な方なんですけど、
他の若い主婦だったら、すぐに上達すると思います」

って、正直に答えました。

 

いやあ、良く頑張った、富士子!

えらいぞ。

どんなにトホホでも、あたしは褒めてあげるわ、富士子!


今日もバイト、頑張りマース。

 

 

 

 

 

おばさバイト、吼える。求人誌のインタビューって?


新宿は超寒いわよ!
4月だっていうのに、ダウン来てる人も多いわ。
まだクリーニングに出してなかったあなたはラッキー!


いつもGWになってから重い腰を上げて衣替えをするのに、
今年は早々と冬物をしまって、薄着でバイトに行ってる富士子(45歳)です。
こう見えて主婦です。


この前ね。
バイト先の居酒屋厨房で、串の補充をしてたらね。
本社(っていうのが店舗と別にあるんだけど)から、電話がかかってきたの。
あたし御指名で。


「え? なんかバレた?」
って、とっさに思った。
なんら、やましい事はしてないんですが、
仕事が遅いババアってだけで、後ろめたいもんだから(笑)。


本社の人事総務担当:荒井注(仮名)からの電話だったんだけど。

「あー、富士子さん?どーもどーも!お疲れさまですー!」って軽い調子。

「今度ウチね、主婦を中心にね、募集をかけようかって思ってるのよ。
まあ、学生やフリーターも引き続き募集してるんだけど、
主婦層ってのをね、大々的に募集しようかって考えててね。

で、富士子さん、すごくたくさんシフト入っているじゃない?
ウチで働いて、実際どんな感じか、っていうのをね、
募集広告を出す会社の人にね、ちょっと話して欲しいのよ。
硬い感じじゃなくてね、ま、インタビューしたいってことなんだけど」

って、突然の申し出。

 

要はね、バイトルっていうネットの求人広告を運営している会社の人が、
記事の作成をするので話をしてあげて欲しい、と。


「ま、常に人は募集してるんだんけど、なかなか集まらなくてねー!
少ない人数でやってると、富士子さんも休みが取れないでしょ。
ま、社員たちも休んでないんだけどね。
どうかね、ここはひとつ、御協力をお願いしますよ。
あ、名前は出したくないってことなら、そこは大丈夫ですから。
もちろん、インタビューはちゃんと富士子さんにも目を通してもらうしね。
ひとつお願いしますよ。うちをヨイショしといて下さいよ。」

って、もーう、すんごい軽い感じで押してくるんだけさー。


ちょっと、気になったのは、ホントに話をするだけでいいの?ってこと。


不:「あの、もちろんお役に立てるようならお受けしたいのですが、
   えっと、話だけなんですよね? 文章だけですよね?」

注:「あー、いちおうね、写真も撮るかもしんないね」

不:「あ、写真はちょっとお断りさせて欲しいです…」

注:「いやあー、そんじゃ、キッチンの他の人たちと一緒ならいいでしょ」

不:「え、あ、じゃあ、他の人たちだけの写真で。キッチン風景ってことで」

注:「いやいや、ま、富士子さんが作業している横顔とか、そんな感じで」

不:「いえいえ、お話ならできるんですけど、写真とかはホントに苦手で」

注:「まあまあ、そこはやっぱり、雰囲気伝えるためにもお願いしますよ」

不:「え、えっと、本当にお話だけにさせて下さると助かるんですが」

注:「まあ、とりあえず、取材の人が行く日が決まったらまた電話しますよ」

不:「荒井注さんも同席して下さるんですよね?」

注:「え、ああ、ん、まあそのつもりですけど、ま、都合が合えば」

不:「お願いします、いきなり一人ではちょっと…」

注:「ああ、まあ、また電話しますよ」


つって、会話が終わったんですけどね。

 

不安。
超不安。

写真は困るってのに、ゴリ押しされちゃいそう。

 

それに。
むくむくと胸に湧き上がる、ちぐはぐ感…
これは一体なに?

 

そもそも。

「主婦を募集するから、働いている主婦に話を聞きたい」

っつって、あたしに電話が来ちゃうところが違和感たっぷり。

 


あたしが、厨房では思いっきり戦力外なのは、散々このブログで書いてるとおりよ。

料理長はじめ、店のキッチン男子たちは、のろまな上に飲み込みが悪いあたしを、
「しょーがないか、おばちゃんだし」と、ぐっとこらえてくれてるわけよ。

お皿の棚には手が届かないし、重いものは運べないし、
「あああ、おばちゃん使えねー!」って思ってても、黙ってくれてるわけよ。

ま、主婦目線で見ても、居酒屋厨房が主婦向けかっていうと、かなり怪しい。
→ おばさんには向かない職業


それでも、若いバイト君だったら、よ。
遠慮なく叱り飛ばしたり、飲みに連れて可愛がったり、ビシバシ鍛えることできるけど、
おばちゃんとなると、ちょっと注意するのさえ気を使うよね。
腫れ物に触るようなところが、どうしても出てきちゃう。

 

そんな彼らが「これからも主婦パートにドンドン来て欲しい」と思っているとは
とても思えないのよね。

「主婦(しかもチビ)より、男子フリーターの方が使いやすい」って思ってるはず。


違和感を覚えるのは、ズバリそこよ!


その辺のリサーチもせずに、本社および荒井注(仮名)は、
「主婦って真面目で、遅刻欠勤をしない上にシフトもたくさん入れる」
って無邪気に思ってるような気がするのよ。

そりゃあね。
荒井注(仮名)だって、まさかあたしがそこまでキッチン男子のお邪魔とは
思わなくて、ちょっとはマシな人材だと思ってるんだろうけど…。
違うんだって!


それにね、もう一個、違和感ポイント言っちゃうけどね。

あたしに向かって「ウチをヨイショしてくださいよ」って、あんた。

 

そんならね。

あたし向けの制服を用意してほすぃ。
あたしが使う道具は、あたしの手の届くところに置いてほすぃ。

じゃなければとても「とってもいい職場です、主婦のみんな是非応募して!」
なんて言えません、って!

応募してきた主婦が「えええ、あの記事、嘘じゃない!」って思うじゃないの。

その辺なんの確認もせずに、藪から棒に
「ヨイショしてください」って言えちゃうあたり、ちょっと無邪気っていうか…。
大丈夫か? 


もちろん、あたしは、制服だの道具の場所だの、なんの文句もないのよ。
キッチン男子に、すごくフォローしてもらってるし、働きやすい職場だと思ってる。

でもね、それって、募集記事に反映できるような働きやすさじゃないわけ。

「キッチン男子が我慢してくれるから大丈夫ですよ、主婦の皆さん!」
なんて、言える訳ないじゃん。

 

あああ。
不安と違和感にまみれて、あたしはトボトボと厨房に向かったわ。

で、静かに仕事をしている料理長に報告したの。


「主婦を募集するらしくって、バイトルの人がインタビューしたいそうで…」


っつったら、料理長。

「くそみたいな職場です、って言っていいですよ」って、破顔一笑


どうよ。
あたしの料理長。

さすがでしょ。
超かっこいいでしょ。

どっと、肩の荷が下りたわ。

 


で、その後色々聞いたのを総合すると、よ。

主婦を大々的に募集っての、お店には特に知らされてなかったそうです。

 

しかも。
この「主婦を大々的に募集しましょう」案は、求人誌の提案なんだってよ。

本社及び荒井注(仮名)が、店舗にリサーチして考え出したわけじゃなかったのよ。

さもありなん…。

 

つまりね。
主婦のほうが定着率が良い、ってことに着眼した求人誌が、
「主婦を前面に出す切り口で募集広告を出してはいかがでしょうか、
取材も構成もこちらでやりますよ、ついては○十万円で」
っていう企画を出して、それを本社がOKしたって筋書きらしいのよ。

ああああ。
バカバカしいっ!!

あたしにインタビューなんて、おかしいなあと思ったのよ。
あまりにも唐突で、ちぐはぐなんだもの。
実態に即してなさすぎ。

もうね、違和感を通り越して、ちょっと腹が立ったわ!

 

(こっからターボ全開で行くよっ!)


荒井注(仮名)が言うとおり、慢性的な人手不足で社員たちはまともに休んでない。
仕込~閉店まで、一日12時間勤務で、休日はせいぜい一ヶ月に4日間程度。
ちなみに、お店は年中無休で、休みは大晦日と元旦だけ。

そうなると、よ。
昼間の仕込み時間も、夜の営業時間も、両方に対応できるプレーヤーを
一人でも多く育ててることが急務ではないか、と思うわけ。

仕込み時間しか働けない主婦を大々的に募集したところで、
社員たちの環境が改善するとは思えないわけ。


問題は、応募してきたバイト君がバックレちゃう、ってことだと思うのよね。
あたしが働いてきた5ヶ月の間に、20歳前後のバイト君が3人もバックれてる。
まあ、彼らも若い分、くだらないプライドやつまんない見栄がピリピリしてて、
それはそれで扱いにくいところもあったと思うわ。
でもね、のびしろがあって、昼夜対応できるバイトであれば、
上手に褒めて伸ばして手間をかけて、育てる甲斐があると思うのよ。
料理の仕事は、技術を磨けばそれで食べていくことだってできるんだから。
やる気のあるバイトが長く働ける環境。
もしくは、やる気のあるバイトが応募したくなるアプローチ。
その辺を試行錯誤してみるのが急務だと思うわけ。

 

でね、そのためにもね、本社及び荒井注(仮名)さん。

もう少しお店側と、まともなコミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。

あたしにいきなり電話してくる時点でね、
コミュニケーションを重視していないことが、よーくわかるわけよ。

写真は嫌だっつってんのにね、ごり押ししてくる時点でね、
パートを見下してるってことが、すごくわかるわけよ。

 

だいたいからね、お店のスタッフと同じ立場になって環境改善を考えるのが、
本社及び荒井注(仮名)さんの仕事でしょ。

求人誌が出す企画に、安易に乗ってちゃダメじゃん。

そもそも、求人誌が、根本的に人手不足を解決する提案を出すわけないっしょ。
人材がそろっちゃったら、募集広告を出してもらえなくなっちゃうんだから。

アホか。

 


あたしがね、パートのおばさんの分際で、こうも真剣に生意気になるのはね、
料理長が病気になったり倒れたりしたらどうするの?
って思ってるからなの。(はい、出ましたよ、料理長えこひいき)


ってか、この状態だと、社員はうっかり風邪も引けない。
休んで旅行に行くとか、とんでもない。


もっと真剣に、社員が休める環境を考えてあげてほしいわ。

 

それとね、いくら底辺のパートおばさんとはいえね、
写真はいやだって言ってるんだから、聞き入れて欲しいわ。

頼むよ荒井ちゃん。

 

あーあ!
毒を吐いたらおなかが空いちゃった。

なんだかんだ不安だの違和感だのを抱えつつ、
この後、あたしはインタビューを受けたのでした。
毒も食らわば皿まで、ってね。


後日談はいずれまた!


明日もバイト、がんばるぞー!

 

 

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真面目な話、あたしは今までの会社員生活で、「大きな決定権をもつ立場の人が、現場の人を軽視してる」って言う場面をいやほど見てきました。作家の事務所で働いてきたんだけど、著作権者は力が強いので、イエスノーを出したり引っ込めたりして現場を混乱させる事なんて朝飯前。作家自身ならともかく、作家でもない事務方がアレコレ口を出して、陰で激しく嫌われたりしてね。あたしもそんな事務方だったので、思い出すのも恥ずかしい事が山ほどあるけど、それでもできるだけ、作家にも現場にもメリットがある方向を探そうと必死でした。未熟すぎて、結局何も出来なかったのですが。

飲食業でも、同じように経営サイドと店舗に大きなズレがあるのを目の当たりにして、いろいろ思うところがあります。何よりも、若い世代や真面目な人たちに、負担としわ寄せが行くことが、すごく気になる。人手不足で全く休まない社員、いつまでも不安定なアルバイト。ここを負担をする人がいることで、得をする人が必ずいる。得をする人は決して既得権を手放さない。問題を解決できる立場にいながら、解決しない。解決する能力がないのか、解決しないで現状維持してるのがラクなのか、あたしにはどっちかわからないけど、端から見ていると、会社ごっこをしているように見える。アホか。

飲食業で働く人には是非伝えたい。キッチンで料理を作る仕事、ホールでお客さんを笑顔にする仕事、仲間と阿吽の呼吸でチームワークをこなす仕事、これらの仕事の面白いところをうんと吸収するのがいいよ!いいように使われてる、っていう気持ちになったら、すぐに違うところに行くのがいいよ!バックレるってことじゃなくてね。問題を解決してよりよくする、っていうケースを学べるところがいいと思うんだよ。そうじゃなかったら、踏みとどまって自分が解決してみる、とかね。ただし、張り切りすぎると、クビになるから気をつけて!あたしは過去に2回もクビになったことがあるよ!イエイ!

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おばさんバイト、人生を振り返る 料理長と先生

 

居酒屋厨房で働く富士子(45歳)です。

こんな夜更けに一人酒。

料理長(かっこいい)について考えました。

 

 

あたしが、どうして料理長に憧れるのかっていうとね。
料理長が、先生に似ているからだと思う。

 

あたしは、10年間ほど、作家の先生の事務所で働いていた。
先生は、スタッフを抱えて作品を作る人だった。
スタッフには、仕事ができる人も出来ない人も、勤務態度が悪い人もいい人もいた。
一筋縄ではいかない、やっぱり作家志望のスタッフたちをまとめあげて、
毎週毎週作品を発表していた。

 

あたしが勤めた頃は、もう先生は、新作は書いていなくて、
過去の作品の著作権料だけで、充分食べていける状態だったけど、
もう現役ではない自分のことを痛めつけるように、毎日アルコールに浸っていた。

 

あたしは、資料室にあった古いアルバムや、原稿庫に眠るたくさんの原稿、
書庫にある山のような単行本に、現役で活躍していた先生の姿を見た。

先生は、職人の緻密さとプライドと、スタッフの力を引き出す人間的な魅力で、
これらの作品を作ってきた。

その作品は、当時の子どもたちはもちろん、大人にも愛された。

 

あたしが働き始めたとき、すでに先生は大御所だったけれど、
新人事務員のあたしが緊張しないよう、心配りをしてくれた。
なんの仕事も出来ず、右も左もわからないあたしに、暖かく接してくれた。
いつも酔っ払っていたけれど。

 

あたしは、時々、先生に仕事のお願いをした。
ちょっとした書き物やコメント、新人賞の作品の審査など、資料を持ってそばに行く。

先生は、お酒のグラスを置いて、ペンを持つ。
さらさらと、原稿用紙に書く。
あたしは、邪魔にならないよう、息をつめて先生の手元を見つめる。
先生は、じっと書き、消し、また書く。
お酒のせいで少し乱れていた線が、ゆっくりきれいな線になっていく。
そんなとき、原稿用紙さえも、先生の線を心待ちにしてじっと息をつめているようだ。
震えていた先生の手も、次第に力強くなって、生き生きとした線が生まれてくる。
あたしは、強い憧れと期待を持って、先生の手元と原稿用紙を見つめる。

 

先生は、ふと、あたしのまなざしに気が付いたように、こっちを見る。
「ん? どうした?」って声をかけてくれる。

 

「え、あ、いえ」って、あたしは戸惑ってしどろもどろになる。
先生は、ちょっと微笑んで、また原稿用紙に戻る。

 

そんな時、部屋の中は静かで、先生のペンの音だけが響いている。
あたしは、世界で一番幸せな時間の中にいるように感じる。

 


あれからもう、何年も経って、先生は天国に逝ってしまった。
あたしは先生の奥さんにもとても良くして貰ったけれど、奥さんももう天国だ。

 


今の厨房で働き始めたとき、どうしていいかわからないことがたくさんあった。

いつだって、料理長は魔法みたいに料理をしていて、とても、声をかけられる感じではなかったけど、困って料理長のほうを見ていると、必ず、料理長は気づいてくれた。

「どうしました?」って、声をかけてくれた。
あたしは安心して、次の作業にとりかかれた。
そのことは、なにかすごく大事で暖かいもののように思えた。


働き始めて数日経った頃、お風呂に入っていたときに、突然思い出した。
料理長に、「どうしました」って言ってもらえるあの瞬間は、
先生との時間とすごく似ている。
何も出来なくて、ただいるだけのあたしをそのまま受け入れてくれた、
優しい先生との暖かい時間と、すごく似ているんだ。


突然、涙があふれて止まらなくなった。
先生と会いたいけど、もう、先生はどこにもいない。

 

あたしは、先生が亡くなったあとも働いていたけれど、
結局、事務所を追われる事になった。
それは、すべてあたしの落ち度で、身から出たさびだった。

 

もう二度と先生の仕事ができなくなって、どこにも居場所をなくしてしまい、
あてどなく仕事を探して、たどり着いたのが厨房だった。

 

厨房の人たちは、毎日お料理を作っている。
人に食べさせるために、魔法のように包丁を操って、
お鍋やオーブンから美味しくて暖かい料理を作る。
職人の丁寧さと繊細さをもって、出し惜しみせずに厨房に立つ。
料理長は、ベテランも新人もいるスタッフをまとめて、
どんなに忙しいときも、確実にお料理を出していく。

 

あたしは、先生が作品を作っていく姿を想像しながら、
憧れと期待を持って、厨房の人たちを見る。

 

あたしは何も出来ない。
いるだけだ。

 


あたしがどうして料理長に憧れるかっていうと、
料理長が先生と似ているからだ。

職人の繊細さやプライド、スタッフへの目配りや暖かさ、
ひょっとするとお酒にひたりかねない種類の優しさ。


あたしは、そのどれも持ち合わせていない。
がさつで、自分の事ばかりを考えていて、図々しくて、結局は仕事を失った。


これからも、あたしはずっと、料理長にただ憧れて、厨房で働くんだろうか。
それとも、いつか少しは、料理長みたいになれるんだろうか。


わかんない。

わかんないけど、出来るのは、毎日きちんと働くことだけだ。

明日もがんばろう。

うん。

 

 

一人酒に任せての、一人語りになっちゃった。

てへっ!


読んでくれてありがとう。

 

 

 

おばさんバイト、天使くんのキャラが変わって戸惑う


また寒くなってきたんですけど!
しかも風が強いわ。
それでも、風に舞う桜の花びらはとってもきれい。

 

この時期いつも思うんだけど、「花と散る」ってイイよなあ。
ある種の理想っていうかね。
「枯れる」よりは「散りたい」思いが募る、富士子(45歳)です。

 


居酒屋の厨房で働くこと、5ヶ月。
あたしによく話しかけてくれてたキッチン男子・大久保くんも辞めてしまい、
お姑さんのように指導してくれたルドルフ先輩とシフトが絡むことが減ってしまい、
料理長とも(競馬以外では)接点がなく、孤独に拍車がかる、今日この頃。


金髪のキッチン男子・天使くんが、時々話しかけてくれるんですが…。
最近、ちょっと、へんなんです。


天使くん、ってね。

金髪に染めてて、耳にも眉毛にも舌にもピアスしてて、
ごっついブーツを履いてて、なかなかハードコアなパンク人(に見える)。
おばちゃんはね、怖くて、目を合わせないようにしてた。

それくらい、キャラの濃ーい若者。→ 金髪のキッチン男子・天使くんの魅力 

とある事件をきっかけに、多少フレンドリーに話をするようにはなったんですが…。

 →  キレちゃって反省 

 

しかしですよ。
ここんとこ、天使くんがちょっと、へんなんです。


この前、洗剤のボトルがオシャレな新品に変わってたんで、

「あ、きれいになりましたね。誰が買ってきたんですか?」

って、隣でボールを洗ってた天使くんに聞いたんですよ。

 

したら、ニヤニヤしながら

「富士子さんの、最愛の人ですよ」

って言うわけ。

 

それってね、ルドルフ先輩のことなのよね。

あたしとルドルフ先輩っつーのはね。
あたしのせこいミスに、ささやかなイヤミでシメにかかってくるので、
逆ギレしたあたしが、さらなるミスでリベンジしてほくそ笑む、
っていう、嫁姑のような小規模な戦いを繰り広げてきた間柄。

戦いに疲れて、天使くんや料理長に八つ当たりしたこともあってね。
その節は、大変ご迷惑をおかけしましたんですけど。


だからってね、「最愛」って、あんた。
んなわけ、ないでしょーが!
  


思わず、

「殺しますよ、そういうこと言うと」

っつっちゃったよね。


したら、天使くん、満面の笑顔で

 

「怖いですねー!! 好きですけどねー、そういう方が! あははっ」

 

って、返してきやがってね。

 

「あはは」って、なによ。
喜んでんじゃねーよ、余裕かましやがって!

ってなったんですけど。

そう思いつつ、ちょっと、面白かったです。
天使くんのそのリアクションが。

 


昨日は、ボールを洗いながら、笑顔で、

 

「昨日ね、夢を見たんっすよ。
夢で、ハリー・ポッターの世界にいたんですよ、俺。
内緒ですよ、うふふふっ」


って、言い出してね。

 

ハリー・ポッター
しかも、「うふふ」って、あんた。

あたしは、いったい、どんな返事をしたら良かったんでしょうか。

 

 


おばちゃんはね、天使くんはハードコアパンクな人、と思い込んでたからね、
しかも、一度そう思うと変更が利かないお年頃だからね。

最近のおしゃべりっぷりは、「天使くんがへんになった」って思えてしょうがない。


でもね、ホールの女子に言わせると、全然違うの。
天使くんって、「明るくて話しやすい人」なんだってよ。

あたしのことはシカトしてたくせに。
(と、僻みモード)


ま、天使くん、「明るくて楽しい」のが本来の姿みたいです。
「へんになった」わけじゃなくてね。
最近ようやく、あたしに普通に接してくれるようになった、っつーことらしい。


春になって、心が緩んできたのかな。
ありがたいことです。

 

 

ところで。
あたしは一体、どこまで心を緩めてるかしら?
みんなに、気を許しているかしら?
自分ことって、わからないよね。

 

明日もバイト。
あったかいお風呂につかって、身も心も緩めてみるか。

がんばるぞー!