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裏の厨房で反省してます

許して キッチン男子

おばさんバイト、「感じ悪い」に凹む 

 

今朝も寒かった…。

ああ、また温泉に行きたい。

居酒屋厨房バイトの富士子です。

 

イベリコ豚のカットが出来ず、長いこと悩んでいます。

「肉を同じ大きさにカットする」ってのが、できません。

しかも、カットしたら串に刺さなきゃならん。

皮の部分は硬くて指しにくくって、無理に指すと形がグズグズに崩れちゃう。

 

その上、「1本の串につき肉の重量は35グラム」って決まってる。

ちっちゃく切りすぎると、たくさん指さなくちゃいけなくて、超不恰好。

大きく切りすぎても、おでんの串みたいなボリューム感が出ちゃって、不恰好。

なかなか、ちょうど良く仕上げられない。

 

もう4ヶ月目になるっていうのに…

毎回、泣きそうな思いで格闘してるのよ、奥さん!

 

で、今日もあったの。イベリコ豚。

もうね、始める前からため息。

3回ため息ついてから、袋を開けてたら…

 

料理長がスッとやってきて、

「富士子さん、イベリコは1本40グラム」

っつって、あたしの手元に秤を置いて、どっか行っちゃいました。

 

あちゃー!

重さがバラバラだったの、バレてた?

最近、肉のサイズが小さくて、どうも少なめの串がチラホラしてたの、わかってた?

 

さすがだわー、キッチン番長。

ごまかし効かないわー。

なんて、惚れ惚れしてる場合ではない。

 

料理長も問題に思ってたんだなー、と思うと、

いつまでたっても出来ない自分が、情けないやら恥ずかしいやら。

やっぱ、あたし、ダメなのかな。これくらいのことも出来ないなんて。

しかも、ずっと35グラムだと思ってたけど40グラムだったのか…。ダメダメじゃん!

 

でもね、こういう時こそ、スマイルよ、富士子(45歳)!

ヨガでもね、苦しいポーズの時には、先生が「スマイル、スマイル」って言うの。

表情が笑顔になるだけで、体も気分も変わってくるの。

苦しさを、乗り越えやすくなるのよ!

 

気を取り直して、笑顔で「はい」と良いお返事をして、作業に取り掛かりました。

 

そこへ、ちょっと馬の合わない先輩がやってきて…。

 

「あああー。富士子さんねえ。

最近、また、肉が小さくなっちゃいましたねー。

ちょっと、様子を見ないうちに、小さくなっちゃって。

エリンギも小さいですね。もっと量を指さないとー…うんぬん苦笑い」

 

ううう…。

今、料理長に指摘されたところだよう。

ってか、聞いてたじゃーん。

 

傷口が広がるのをぐっとこらえて、

「申し訳ありません」って謝ったら。

 

「え? なんか、感じ悪いなあ」

って、言われちゃいました。

 

えええええー!?

 

思わず、

「どうして?」

って聞き返しちゃった。びっくりして敬語も吹っ飛んだ。

 

「いや、冗談で言ったつもりだから」

 

えええええー?

わ、わかんなかったッス…。

 

「本当に申し訳ないと思ったので…気分悪くされたならごめんなさい」

って、また謝ってしまい、

 

「いやいやいやいや、もういいですもういいです」

みたいに言われてしもうた。

 

…………。

また失敗したよ。バカ富士子。バカバカバカ!

 

いやあ、馬の合わないとこがある先輩だから、

「申し訳ありません」って口で言いつつも、反抗的な感じが出てたのかな。

それとも、「申し訳ありません」っていうリアクションが重過ぎて、

かえって先輩に「言いすぎた感」を抱かせちゃったのかな。

(いや、正直、言いすぎじゃん、って思ったんだが)

 

そういうところが、バカなんだってば、富士子。

注意する方だって神経使ってるんだから、もっと負担にならないよう答えないと。

あーあ。

ほんっと、あたしの不徳の致すところです。

 

「仕事ができない」って、こういう軋轢も生むよね。

注意したりされたり、そのやりとり自体が、双方にとってストレス。

 

あああああ、「仕事ができる」ようになりたいよう!

 

 

それにつけても。

料理長、かっこいいです。

注意するときも、追い詰めない伝え方をしてくれる。

料理長って、いっつも、そう。

 

こういうことがあるたびに、あたしは昔のことを思い出す。

会社員時代、部下や後輩にどう接していたか。自分はどんな上司だったか。

あたしは、決して、料理長みたいじゃなかった。

 

料理長をかっこいいと思うたびに、取り消せない自分の汚点が蘇ってくる。

「かっこいい!」の直後に、「もうやだ、思い出したくない!」って思う。

 

もっと、料理長ができない奴で、あたしよりバカだったらいいのに。

優越感に浸ってられれば、悲しい自分と向き合わなくて済むのに。

 

なんつってな。

それじゃ何も変わらん。

 

きっと神様が、「自分を見つめなおせ、バカ富士子」って思って、

あたしをこのバイトに寄こしたんだと思う。

 

45歳にもなって、酷な運命だと恨めしいけど、せっかくだから頑張ります。

あたしも、人の気持ちがわかって、寄り添っていられる大人になりたい。

今からでも、間に合うのかな。

 

 

明日もバイトだー!

早起きしなきゃ。