裏の厨房で反省してます

許して アタシのでたらめ人生

おばさんバイト、料理長のまかないに興奮!

 

寒の戻りっていうんですか、寒いですよ、新宿は。

でもね、ビシっとガーリックの効いたパスタで、身も心も温かい富士子(45歳)です。

居酒屋厨房でバイトしてます。

 

今日はね。いいことがあったの!!

 

新人ながら、フライパン使いが堂に入っているキッチン男子・アントニオ。

すでに他店で10年近い調理経験を積むベテランで、料理長にも当てにされてる。

彼の作るまかないが美味しいもんだから、あたしも密かにファン。

ただ、意外と華奢で、ちょいちょい、休むのよね。今日も発熱で、突然のお休み。

 

えー!アントニオ、来ないのー!

今日、まかない当番だったじゃーん。楽しみだったのに…。

 

って、ちょっとやる気をなくした富士子(45歳)でしたが。

 

お昼時になって、料理長(かっこいい)が、

「今日、富士子さんお昼食べます?」って聞いてくるじゃない。

 

あらん? どういうこと?

料理長が作るってこと? まかないを? 食べる食べますよ食べるわよもちろん!

 

「はいっ!」って元気良くお返事しました。いえーい!

 

まかない当番は、メインのキッチン男子が交代で務めてるんだけど、料理長はローテーションに入っていません。あのね、料理長のお料理を食べたかったらね、お金を払ってですね、お客さんとして来ないとダメなの。まかないは、作らないの。なんたって、キッチン番長ですからね。あたしは、かれこれ5ヶ月働いてますけどね、一回も食べたことないです、料理長のまかない。唯一、お正月のお雑煮を頂いたくらいです。

このときの感動は → 料理長のお雑煮が出た

 

そんなキッチン番長が、満を持して(代打で)作るまかない!

もう、そわそわしちゃって、椎茸を串に刺すどころじゃありません。

 

バットを取りに行く。

ボールを洗いに行く。

スモークするため(と見せかけて)ガス台の空きを見に行く。

 

なにかっつーと、裏の厨房を覗きに行っては、料理長の動きをチェキ。

その他大勢のキッチン男子(失礼)に、うっとおしいと思われても気にしない!

 

大きなフライパンにたっぷりのオリーブオイル。

中には、刻まれたにんにくと、つやつやした赤唐辛子がちりちりしてる。

バットには、いろんな種類のきのこが、いかにも食べやすい様子にほぐされてる。

大きな寸胴鍋に、たっぷりのお湯が沸いて、中にパスタがゆらゆらしてる。

 

ああ、このにんにくは、素早く静かに魔法みたいに刻まれたに違いない。あの唐辛子だって、唐辛子も気が付かないうちに、一瞬で種を取り除かれてフライパンに入れられたに違いない。たくさんのきのこは、細くて長い指で、なにもしていないみたいに、優しくほぐされたに違いない。パスタだって、きっかり人数分の量だけ、何も考えていないみたいに無造作に取り出されて、お鍋にそっと入れられたに違いない。いつだって、料理長のお料理の仕方は、静かで優しくて、さりげないのだ。

 

ああ、きのこスパゲッティ作ってるんだ! 早く食べたいようー。

だって、料理長(かっこいい)が作ってるんだもん!!

 

………。

あたしが、いかに自分の仕事に集中していなかったか、お分かり頂けたでしょうか。

獅子唐もポロ葱も、普段なら大きさ揃えたり分量調整したりするんだけど、ま、だいたいのところで済ませちゃって、残ってた椎茸もラップして強制終了して準備完了。

いつでも食べられるよう待機! ビシッ!

 

 

厨房では、料理長が大きなフライパンを事も無げに片手で持って、パスタをお皿に移していきます。キッチン男子・スズキくん(初登場)がやってきて運ぼうとすると、

 

「まだ! 盛り付け終わってねえよっ」って料理長が。

 

実はね、料理長、すごく言葉遣いが雑です。可愛がってる後輩には、特にキツイ。

 

「持ってくんじゃねえぞ、まだ!」って言いながら、海苔と大葉を乗せていきます。

 

ああ、この糸みたいに細く切られた大葉!包丁を小さく早く動して、大葉も何が起きてるかわからないうちに、ふわふわにされたに違いない。

 

と思っているうちに、スズキくんが完成したお皿を運んできます。

 

「この大きいお皿は、天使くんね」って、料理長。

 

キッチン男子・天使くん、ご飯はあまり食べないけどパスタは大量にいける。料理長はそんな天使くんに、大盛りによそってたの。そういうところも、美味しい感じ!

 

みんなが席について、料理長が「いただきます」って言って、わーい!ごはんだ!

 

海苔と大葉がふんわりたくさん乗っかって、熱々のパスタはコシがあって、きのこも歯ごたえが残ってて、美味しい!ちょっと濃い目の味ににんにくが効いて、寒い厨房で冷えた体がみるみるあったまる。

 

マジですか?超美味しいんですけど。ああ、あたし、これバケツ一杯食べられるわ!

 

途中から、ちょっと記憶がありません。食べるのに集中しすぎて。ホント美味しかった。

 

おなか一杯になって、満足して椅子にふんぞり返って、一息ついて、ふと見ると。

隣のスズキくん、小皿にたくさんの唐辛子をよけてる。

あたしも天使くんも、スパゲッティに唐辛子は一本も入ってなかったのに。

料理長、可愛がってるスズキくんのお皿にだけ、全部の唐辛子を混ぜてたみたいです。

 

こんないたずらも、一瞬のうちにやったに違いない!

 

料理長(かっこいい)の魅力満載の美味しいひと時でした。

 

ちょっと不思議だったのはね…。

お箸で食べたのよね、きのこスパゲッティを。

当然のようにお箸が出て、ごく自然に全員がお箸で食べてるの。

「あ、フォーク出さなきゃ」とか、誰も言わない。ま、あたしも言えなかったよね。

なんで、おそば食べるみたいに、啜って食べました。

これね、スープが絡んだまま口に入るし、ぐいぐい食べられて案外悪くなかったです。

スズキくんも、唐辛子をよけやすかったと思う(笑)

 

 

さ、今度はいつ、まかない当番が突然休むかしら?

よこしまな楽しみが増えました。へへへっ!

 

さ、寒さに負けず、お仕事がんばるぞー。