おばさんバイト、僻み節
大変!
新宿は、桜がほぼ満開よ。
週末を待ってられないわ。お花見お花見!
特にお花見に行く相手がいるわけでもない、富士子(45歳)です。
居酒屋の厨房でバイトしています。
日曜日はお休みなんですけど、ヒマなもんで、ちょいちょい出勤してます。
今日、バイトに行ったら、2階フロアで料理長が死んでました。
朝まで飲んでたみたいです。
あたしが串の補充をするのも2階なんですけど、
あたしからは、寝込んでる料理長の、ちょうど足だけが見える。
ピクリともしないし爆睡してるようので、心置きなく、
バットや洗浄機で、ガンガン騒音出してやりました。
昨夜、ホールでバイトしてる学生さん二人が卒業で辞めてしまうので
送別会があったそうです。
あたしはね、ホールの子たちとは、殆ど面識がないの。
顔を合わせるのは、仕込み時間にホールで準備してるほんの数人だけ。
当然、送別会なんて、あることさえ知らない。
そもそも、一番おしゃべりしていたキッチン男子・大久保くんが辞める時さえ、
まったく声がかからなかった、っつー、孤高のパートですからね。
まあね、ホールの子なんて、みんな20~23歳くらいだから、あたしなんて母親みたいなもんですよ。飲みの席で一緒になっても、こっちも困っちゃうんですけどね。
でもね。
一時間もグーグー寝ておいて、
「いやー、今日は富士子さんがいてくれて助かりました。休めました。」
って、あんた(料理長)。
あたしを仲間外れにしといて、何言ってんの?
休んでんじゃないわよ。
なーんて、口が裂けても言えない。
かといって、
「休めました? 良かったー。お役に立てて嬉しいです!」
なんて、とっさに言えるほど器用じゃねーし。
そんなうそが上手だったら、会社クビになったりしないっつーの。
で、
「そうなんですか。何が起きてるのかわかんないですけど」
って、言っておきました。
この可愛げのなさ。
あたしが上司だったら、クビにしたくなるね。
料理長が寝ている間、キッチン男子・埼玉くん(仮名)に、
「ホールの子と朝まで宴会なんて、みんな仲いいですね」
って話してたら、
「キッチンとホールは接点少ないんですけど、飲み会で仲良くなりますね」
だって。
ってことは、よ。
飲み会に一度も誘われない孤高のパートは、誰かと仲良くなるチャンスは皆無。
ずっと孤高。
ま、あたしも大人の女性ですからね。
ババアと飲みたくないって気持ちを汲む余裕は、たっぷりありますよ。
むしろ、孤高って言葉が似合うよう、誇り高く生きていきます。
そんなわけで。
今日の仕込みもベーコンが間に合わなかったんですが、
「出来ておりませんので」
って、頭を高く上げて料理長にお伝えして、帰ってまいりました。
感じわるー!
明日も、バイトだー。
帰り道は、孤高のお花見散歩してきちゃおっと。