裏の厨房で反省してます

許して アタシのでたらめ人生

おばさバイト、吼える。求人誌のインタビューって?


新宿は超寒いわよ!
4月だっていうのに、ダウン来てる人も多いわ。
まだクリーニングに出してなかったあなたはラッキー!


いつもGWになってから重い腰を上げて衣替えをするのに、
今年は早々と冬物をしまって、薄着でバイトに行ってる富士子(45歳)です。
こう見えて主婦です。


この前ね。
バイト先の居酒屋厨房で、串の補充をしてたらね。
本社(っていうのが店舗と別にあるんだけど)から、電話がかかってきたの。
あたし御指名で。


「え? なんかバレた?」
って、とっさに思った。
なんら、やましい事はしてないんですが、
仕事が遅いババアってだけで、後ろめたいもんだから(笑)。


本社の人事総務担当:荒井注(仮名)からの電話だったんだけど。

「あー、富士子さん?どーもどーも!お疲れさまですー!」って軽い調子。

「今度ウチね、主婦を中心にね、募集をかけようかって思ってるのよ。
まあ、学生やフリーターも引き続き募集してるんだけど、
主婦層ってのをね、大々的に募集しようかって考えててね。

で、富士子さん、すごくたくさんシフト入っているじゃない?
ウチで働いて、実際どんな感じか、っていうのをね、
募集広告を出す会社の人にね、ちょっと話して欲しいのよ。
硬い感じじゃなくてね、ま、インタビューしたいってことなんだけど」

って、突然の申し出。

 

要はね、バイトルっていうネットの求人広告を運営している会社の人が、
記事の作成をするので話をしてあげて欲しい、と。


「ま、常に人は募集してるんだんけど、なかなか集まらなくてねー!
少ない人数でやってると、富士子さんも休みが取れないでしょ。
ま、社員たちも休んでないんだけどね。
どうかね、ここはひとつ、御協力をお願いしますよ。
あ、名前は出したくないってことなら、そこは大丈夫ですから。
もちろん、インタビューはちゃんと富士子さんにも目を通してもらうしね。
ひとつお願いしますよ。うちをヨイショしといて下さいよ。」

って、もーう、すんごい軽い感じで押してくるんだけさー。


ちょっと、気になったのは、ホントに話をするだけでいいの?ってこと。


不:「あの、もちろんお役に立てるようならお受けしたいのですが、
   えっと、話だけなんですよね? 文章だけですよね?」

注:「あー、いちおうね、写真も撮るかもしんないね」

不:「あ、写真はちょっとお断りさせて欲しいです…」

注:「いやあー、そんじゃ、キッチンの他の人たちと一緒ならいいでしょ」

不:「え、あ、じゃあ、他の人たちだけの写真で。キッチン風景ってことで」

注:「いやいや、ま、富士子さんが作業している横顔とか、そんな感じで」

不:「いえいえ、お話ならできるんですけど、写真とかはホントに苦手で」

注:「まあまあ、そこはやっぱり、雰囲気伝えるためにもお願いしますよ」

不:「え、えっと、本当にお話だけにさせて下さると助かるんですが」

注:「まあ、とりあえず、取材の人が行く日が決まったらまた電話しますよ」

不:「荒井注さんも同席して下さるんですよね?」

注:「え、ああ、ん、まあそのつもりですけど、ま、都合が合えば」

不:「お願いします、いきなり一人ではちょっと…」

注:「ああ、まあ、また電話しますよ」


つって、会話が終わったんですけどね。

 

不安。
超不安。

写真は困るってのに、ゴリ押しされちゃいそう。

 

それに。
むくむくと胸に湧き上がる、ちぐはぐ感…
これは一体なに?

 

そもそも。

「主婦を募集するから、働いている主婦に話を聞きたい」

っつって、あたしに電話が来ちゃうところが違和感たっぷり。

 


あたしが、厨房では思いっきり戦力外なのは、散々このブログで書いてるとおりよ。

料理長はじめ、店のキッチン男子たちは、のろまな上に飲み込みが悪いあたしを、
「しょーがないか、おばちゃんだし」と、ぐっとこらえてくれてるわけよ。

お皿の棚には手が届かないし、重いものは運べないし、
「あああ、おばちゃん使えねー!」って思ってても、黙ってくれてるわけよ。

ま、主婦目線で見ても、居酒屋厨房が主婦向けかっていうと、かなり怪しい。
→ おばさんには向かない職業


それでも、若いバイト君だったら、よ。
遠慮なく叱り飛ばしたり、飲みに連れて可愛がったり、ビシバシ鍛えることできるけど、
おばちゃんとなると、ちょっと注意するのさえ気を使うよね。
腫れ物に触るようなところが、どうしても出てきちゃう。

 

そんな彼らが「これからも主婦パートにドンドン来て欲しい」と思っているとは
とても思えないのよね。

「主婦(しかもチビ)より、男子フリーターの方が使いやすい」って思ってるはず。


違和感を覚えるのは、ズバリそこよ!


その辺のリサーチもせずに、本社および荒井注(仮名)は、
「主婦って真面目で、遅刻欠勤をしない上にシフトもたくさん入れる」
って無邪気に思ってるような気がするのよ。

そりゃあね。
荒井注(仮名)だって、まさかあたしがそこまでキッチン男子のお邪魔とは
思わなくて、ちょっとはマシな人材だと思ってるんだろうけど…。
違うんだって!


それにね、もう一個、違和感ポイント言っちゃうけどね。

あたしに向かって「ウチをヨイショしてくださいよ」って、あんた。

 

そんならね。

あたし向けの制服を用意してほすぃ。
あたしが使う道具は、あたしの手の届くところに置いてほすぃ。

じゃなければとても「とってもいい職場です、主婦のみんな是非応募して!」
なんて言えません、って!

応募してきた主婦が「えええ、あの記事、嘘じゃない!」って思うじゃないの。

その辺なんの確認もせずに、藪から棒に
「ヨイショしてください」って言えちゃうあたり、ちょっと無邪気っていうか…。
大丈夫か? 


もちろん、あたしは、制服だの道具の場所だの、なんの文句もないのよ。
キッチン男子に、すごくフォローしてもらってるし、働きやすい職場だと思ってる。

でもね、それって、募集記事に反映できるような働きやすさじゃないわけ。

「キッチン男子が我慢してくれるから大丈夫ですよ、主婦の皆さん!」
なんて、言える訳ないじゃん。

 

あああ。
不安と違和感にまみれて、あたしはトボトボと厨房に向かったわ。

で、静かに仕事をしている料理長に報告したの。


「主婦を募集するらしくって、バイトルの人がインタビューしたいそうで…」


っつったら、料理長。

「くそみたいな職場です、って言っていいですよ」って、破顔一笑


どうよ。
あたしの料理長。

さすがでしょ。
超かっこいいでしょ。

どっと、肩の荷が下りたわ。

 


で、その後色々聞いたのを総合すると、よ。

主婦を大々的に募集っての、お店には特に知らされてなかったそうです。

 

しかも。
この「主婦を大々的に募集しましょう」案は、求人誌の提案なんだってよ。

本社及び荒井注(仮名)が、店舗にリサーチして考え出したわけじゃなかったのよ。

さもありなん…。

 

つまりね。
主婦のほうが定着率が良い、ってことに着眼した求人誌が、
「主婦を前面に出す切り口で募集広告を出してはいかがでしょうか、
取材も構成もこちらでやりますよ、ついては○十万円で」
っていう企画を出して、それを本社がOKしたって筋書きらしいのよ。

ああああ。
バカバカしいっ!!

あたしにインタビューなんて、おかしいなあと思ったのよ。
あまりにも唐突で、ちぐはぐなんだもの。
実態に即してなさすぎ。

もうね、違和感を通り越して、ちょっと腹が立ったわ!

 

(こっからターボ全開で行くよっ!)


荒井注(仮名)が言うとおり、慢性的な人手不足で社員たちはまともに休んでない。
仕込~閉店まで、一日12時間勤務で、休日はせいぜい一ヶ月に4日間程度。
ちなみに、お店は年中無休で、休みは大晦日と元旦だけ。

そうなると、よ。
昼間の仕込み時間も、夜の営業時間も、両方に対応できるプレーヤーを
一人でも多く育ててることが急務ではないか、と思うわけ。

仕込み時間しか働けない主婦を大々的に募集したところで、
社員たちの環境が改善するとは思えないわけ。


問題は、応募してきたバイト君がバックレちゃう、ってことだと思うのよね。
あたしが働いてきた5ヶ月の間に、20歳前後のバイト君が3人もバックれてる。
まあ、彼らも若い分、くだらないプライドやつまんない見栄がピリピリしてて、
それはそれで扱いにくいところもあったと思うわ。
でもね、のびしろがあって、昼夜対応できるバイトであれば、
上手に褒めて伸ばして手間をかけて、育てる甲斐があると思うのよ。
料理の仕事は、技術を磨けばそれで食べていくことだってできるんだから。
やる気のあるバイトが長く働ける環境。
もしくは、やる気のあるバイトが応募したくなるアプローチ。
その辺を試行錯誤してみるのが急務だと思うわけ。

 

でね、そのためにもね、本社及び荒井注(仮名)さん。

もう少しお店側と、まともなコミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。

あたしにいきなり電話してくる時点でね、
コミュニケーションを重視していないことが、よーくわかるわけよ。

写真は嫌だっつってんのにね、ごり押ししてくる時点でね、
パートを見下してるってことが、すごくわかるわけよ。

 

だいたいからね、お店のスタッフと同じ立場になって環境改善を考えるのが、
本社及び荒井注(仮名)さんの仕事でしょ。

求人誌が出す企画に、安易に乗ってちゃダメじゃん。

そもそも、求人誌が、根本的に人手不足を解決する提案を出すわけないっしょ。
人材がそろっちゃったら、募集広告を出してもらえなくなっちゃうんだから。

アホか。

 


あたしがね、パートのおばさんの分際で、こうも真剣に生意気になるのはね、
料理長が病気になったり倒れたりしたらどうするの?
って思ってるからなの。(はい、出ましたよ、料理長えこひいき)


ってか、この状態だと、社員はうっかり風邪も引けない。
休んで旅行に行くとか、とんでもない。


もっと真剣に、社員が休める環境を考えてあげてほしいわ。

 

それとね、いくら底辺のパートおばさんとはいえね、
写真はいやだって言ってるんだから、聞き入れて欲しいわ。

頼むよ荒井ちゃん。

 

あーあ!
毒を吐いたらおなかが空いちゃった。

なんだかんだ不安だの違和感だのを抱えつつ、
この後、あたしはインタビューを受けたのでした。
毒も食らわば皿まで、ってね。


後日談はいずれまた!


明日もバイト、がんばるぞー!

 

 

::::::::::::::::::::::::::::::::::::

真面目な話、あたしは今までの会社員生活で、「大きな決定権をもつ立場の人が、現場の人を軽視してる」って言う場面をいやほど見てきました。作家の事務所で働いてきたんだけど、著作権者は力が強いので、イエスノーを出したり引っ込めたりして現場を混乱させる事なんて朝飯前。作家自身ならともかく、作家でもない事務方がアレコレ口を出して、陰で激しく嫌われたりしてね。あたしもそんな事務方だったので、思い出すのも恥ずかしい事が山ほどあるけど、それでもできるだけ、作家にも現場にもメリットがある方向を探そうと必死でした。未熟すぎて、結局何も出来なかったのですが。

飲食業でも、同じように経営サイドと店舗に大きなズレがあるのを目の当たりにして、いろいろ思うところがあります。何よりも、若い世代や真面目な人たちに、負担としわ寄せが行くことが、すごく気になる。人手不足で全く休まない社員、いつまでも不安定なアルバイト。ここを負担をする人がいることで、得をする人が必ずいる。得をする人は決して既得権を手放さない。問題を解決できる立場にいながら、解決しない。解決する能力がないのか、解決しないで現状維持してるのがラクなのか、あたしにはどっちかわからないけど、端から見ていると、会社ごっこをしているように見える。アホか。

飲食業で働く人には是非伝えたい。キッチンで料理を作る仕事、ホールでお客さんを笑顔にする仕事、仲間と阿吽の呼吸でチームワークをこなす仕事、これらの仕事の面白いところをうんと吸収するのがいいよ!いいように使われてる、っていう気持ちになったら、すぐに違うところに行くのがいいよ!バックレるってことじゃなくてね。問題を解決してよりよくする、っていうケースを学べるところがいいと思うんだよ。そうじゃなかったら、踏みとどまって自分が解決してみる、とかね。ただし、張り切りすぎると、クビになるから気をつけて!あたしは過去に2回もクビになったことがあるよ!イエイ!

::::::::::::::::::::::::::::::::::::