裏の厨房で反省してます

許して キッチン男子

おばさんバイト、インタビュー受けたよ!

 

今日の新宿はちょっと暖かい。
パーカーいっちょでバイトにGO!


【あらすじ】
居酒屋厨房で働く富士子(45歳)は、
悪の秘密結社(本社)から、求人雑誌に掲出する募集広告のために
インタビューを受け、写真撮影にも応じるよう指令を受けた。
お店の平和に全く関係ない指令に、戸惑いを覚える富士子。
ほうれい線が写真にバッチリ写ることを恐れながら、
仲間のいる厨房へと戻っていった。

 

前回、本社の方針について偉そうに吼えたんですが(すいません)、
あたしが一番困ったのは、写真撮影する、ってことなんです。


やだよー。
話だけならいいけど、写真はやだよー。

だってね。

おばちゃんね、普段、スッピンなんだよー。
スッピンで撮影なんてやだよう。
ほうれい線も、眉間の皺も、目の下のくすみも隠しようがないじゃーん。

かといってね。

撮影のためにお化粧もできないのよぅ。
「あ、おばちゃんやる気出してる」って、キッチン男子に思われちゃうじゃん!

イヤだぁ!!!
恥ずかし過ぎる!


うううう。

もうあたしはね、ここでは、二度とお化粧が出来ない体なのよう!

 

 

厨房で、料理長に、

「絶対やです、写真はー。
人前に出ないからこの仕事を選んだんです。やですー。」

ってダラダラ愚痴を言ったんですよね。

そしたら!


料:「イヤって言えばいいですよ。無理には撮らないでしょう」

不:「そうでしょうか。話と写真がセットだから、って押してくる気がします」

料:「じゃあ、取材の人に断ればいいですよ」

不:「はっきり断っていいものでしょうか、社外の人に。
   前の職場ではっきり色々断って、物議を醸したことがあって」

料:「じゃあ、『料理長が断っていいって言った』って言えばいいですよ」


ちょっと…

料理長…

な、なんてかっこいいの!

 

あまりのかっこよさに面食らって、

「え、あ、でも…」

みたいになっちゃった。


ここは「ありがとうございます」だろ、富士子。

照れてる場合か。

 

さて、インタビュー当日。

料理長はお休みでしたが、前日に「本人は写真嫌がってますんで」って
電話で荒井注(仮名)に言っといてくれてました。(わーお!)


バイトルの人は、20代前半の、いかにも若手の新人営業さん。
時間通りにいらしたので、店長が席にご案内。


同席して欲しい、と頼んでいた荒井注(仮名)さんは来ず。

ま、しょうがないか…。

ってか、注さん、いないほうが良いかも。
面と向かって、写真撮らせろって、言われたら怖いもん。

と思っていたら!


店長が、

「いやいや、注さん来ないとダメでしょ」って、

本社に対して、まさかの呼び出し!


あらあらあら。
店長ったら、頼もしいじゃないの。


って感心してる場合じゃないわ。

注さんが来る前に、バイトルさんにダメ出ししちゃえ!
急げ、富士子!


バイトルさん、客席で一人座って、注さんと富士子の登場を待ってる。

あたしは、ポロ葱を運ぶついでにちょっと挨拶…
という風を装って近づいた。


「あの、富士子といいます。今日はお話だけってことでお願いしてたんですが…」

きょとんとしてから、慌てて挨拶を返すバイトルさん。

「あ、初めまして。今日はよろしくお願いします。」


あたしも慌てて、

「あの、お話だけで、お写真はない方向でお願いしてたんですが、いいでしょうか」

って、単刀直入に早口で返すと


「ああ、そうかもしれないと伺ってました。大丈夫です。」

って、バイトルさんが。

ああああ、良かった!

 


荒井注(仮名)は、30分遅れでやって来て、

「いやあ、僕がいたらね、自由にしゃべれないだろうから、
 席を外しとくんでよろしく」

っつって、どっか行っちゃった。

まあいいや。

 

インタビューは、

・働いてよかったことは?
・主婦として働きやすい点は?
・厨房の仕事が家事に役立ったりしますか?

っていうような内容。


・短い時間だけなので、自分の時間は確保できる
・家事との両立は充分可能
・プロの仕事を間近で見られるのが醍醐味
・調理法のいくつかは、自宅の料理にも役立つ

というようなことを答えました。


あたしが一番時間を割いてしゃべったのは…


「この店、とっても丁寧にお料理してるんですよぉ!」ってこと。


コロッケは毎日、じゃが芋と里芋を皮から茹でて作ってるんですよ。
皮から茹でると風味が全然違うんですよ、知ってました?


バニラアイスも手作りですよ。
しかも、マダガスカル産のバニラビーンズを使ってます。
ニューギニア産より高いんですよ!


お刺身のつまの大根って、機械で作ってると思ってたんですけどね。
違うんですよ、ここでは!
かつらむきして、包丁で作ってるんですよ。
とりわけ、料理長のかつらむきは芸術的な薄さでね。


などなど…

 

手間をかけて手作りしている様子がどんなに魅惑的か、熱く語ること20分。


バイトルさんから、

「えっと、要するに、プロの仕事を見ることが出来るわけですね」と

一言でまとめられて、はっと我に返り、インタビューが終わったのでした。

 


帰り際。

荒井注(仮名)が、バイトルさんに向かってしゃべってた。

あたしがいないと思ってたらしくて。


「写真、どうだった? だめ? どうする?

そっかー、困ったね。

別店舗にも、主婦いるけどね。

そっちあたってみる?

じゃ、そうしよ。

で、今夜だよね、飲みでしょ。8時半ね。

まったくさー、もっと早く出来なかったのー、遅いよー。

8時半っていったらさー、もう、ウチに帰ってる時間だよ。

ま、いいや、せっかくだからね。どうもね。

んじゃ、また後ほど!」


って、すんごい軽い感じでトークしてた。


無事に取材が終わって、気が軽くなった富士子には、
そんな注さんの軽いノリが、妙にフィットしちゃってね。

なんか、親しみを感じました。


昨日は悪く言ってごめーん!

 

 

 

 

それはさておき。


インタビュー中、あたしが一番アタフタした質問が、これ。

「包丁の使い方など、うまくなったりしましたか?」

 

うっげー!

うまくなったり、してませーん!


動揺のあまり、5秒くらい沈黙してから、

「え、えっと、あたしは、ちょっと、ちょっと不器用な方なんですけど、
他の若い主婦だったら、すぐに上達すると思います」

って、正直に答えました。

 

いやあ、良く頑張った、富士子!

えらいぞ。

どんなにトホホでも、あたしは褒めてあげるわ、富士子!


今日もバイト、頑張りマース。