読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

裏の厨房で反省してます

許して キッチン男子

おばさんバイト、コースの撮影で撃沈


順調にフリーター生活を送る、富士子(45歳)です。

会社員をクビになったのが約1年前で、居酒屋の厨房バイトを始めたのが半年前。
まさかの、毎月10万円そこそこLIFE!
でもね、意外と悲壮感なく暮らしてます。
楽しく働いて、美味しくご飯が食べられればハッピー。
定期預金も、1回しか解約してないよ、今んとこ!
イエーイ!


さて。

厨房での仕込みに飽き足らず、富士子が自ら立ち上げたプロジェクト。

「お料理の写真を撮るから、お店のフェイスブックで使って欲しい」大作戦。


第三回目の撮影のチャンスがやってまいりました!
(先月だけどね)

今回はキツかったッスよー。


「明日、本社の担当者がコース料理の撮影するから、富士子さんも撮って下さい」

って、料理長(かっこいい)から、突然のミッションが!


あたしのバイト先は居酒屋なんだけど、季節ごとにコース料理を設定してる。
で、6月から、夏のコースが始まるわけ。

ぐるなびその他の媒体にコース料理を紹介するために、本社の販促担当者が
写真撮影をするってわけ。

料理長(かっこいい)は、この撮影のために、全コースのお料理を用意するわけ。

で、「ついでだから、富士子さんも一緒に撮影しちゃいなさいよ」と。

まあ、こういうわけですよ。


なんかねー。
簡単に言ってくれるけどねー。
あんた全然わかってないよ。(あんた=料理長)

無理だってー!

本社の販促担当者さまと同席して、パートのおばちゃんがお料理撮影するなんて…!
しかも、コース料理を!

一体、なんの拷問ですか?


今までの撮影はね、「一品ずつ撮影する」っていう前提で、
毎回自宅で数時間かけてシュミレーション撮影をして、やっと本番に臨んでいたのよ。

あたしの腕前じゃあね、
状況に応じて、臨機応変にセッティングなんてできないのよっ!

それなのに…

コース料理を一品ずつ全品その場で撮影し、最後にはコース全体を一枚に収めること。
本社の担当者が撮影する合間に、撮らせてもらうこと。

って、あんた!(あんた=料理長)

ちょっと、ミッションが過酷過ぎやしませんか?

もうね、軽く眩暈がしましたよ。


さて当日。

本社の販促担当者は、すごいわよ!
数万円の照明機材をお持ち遊ばされたのよ。光源バッチリだから三脚いらず!
ズームが利くカメラを手持ちして、さかんにシャッターを押してる。

どんどん運ばれてくるお料理を上手にレイアウトして、いい具合に光を当てて、
色んな角度から色んなパターンの写真を撮ってた。

さすが!  やっぱり販促担当は違うね~。慣れてるね~。

 

一方、おばさんパートの富士子はというと…

三脚とカメラを持って立ち尽くし、ひたすら感心して見てるだけ。

自分なりの工夫をする余裕もなく、ま、そもそもそんな技術もなく、
「あたしって何もできないんだわ」って思うだけ。

 

担当者が設定した専用照明と配置があまりに完璧だったので、

「このままの状態を、このカメラで撮らせてもらうのが一番良い気がします」

って言ってみたのですが…

「お店のフェイスブックの写真は、本社の写真とは違うイメージで撮って下さい」

って、もっともなことを言われ、断られました。とほほ。

 

仕方がない…

四の五の言ってられないわ、とにかく撮影しなきゃ!

担当者の撮影が済んだお皿から撮らせてもらったんだけどねー。


店内の照明が弱くて、接写しないと上手く映りこまないの。
でも、マクロレンズじゃないから、近すぎると焦点が合わないの。


ううう、どうにも、撮りようがないよぅ!

 

何とか美味しそうに写せないか、と、色んな角度を試してみたんだけど、
三脚の調節をしているうちに、どんどん時間が経っちゃう。


お肉の串焼きも、リブロースのステーキも、すっかり冷めて油が固まっちゃうし、
サラダの葉っぱはしなびちゃうし…
とどめのデザートは、ガラスの器に入ったババロア、っていう難易度の高い一品で、
こんなの、うちでシュミレーションしなけりゃ撮れないよ!

って、もう、泣きたくなったよ。うう。

 

担当者は2時間かけて撮影を終え、あたしもカメラをしまいました。

美味しそうだったたくさんのお料理も、冷めたり溶けたりしてくたびれた様子。

「お皿、厨房に戻さなきゃ…」って、ぼんやり見てたら、
なんだか、くたびれたお料理が自分に重なって見えちゃってねー。


もう、あたしもこのまま捨てちゃって!

って気分になりました。


でもね、それじゃだめよ、富士子。
気を取り直して厨房に戻って、料理長に

「うまく撮れませんでした。すみません、せっかくのチャンスだったのに」

って、素直にちゃんと謝りました。


っていうのは、真っ赤な嘘ー!!

 

「時間が経ってお料理がダメになっちゃって…」
「本社の人の邪魔になったらいけないと思ったんです…」
「本社と同じ照明やレイアウトで撮影したらダメって言われちゃって…」
「あの照明だと、お料理が白っぽくなって美味しくなさそうな気がして」
「だから、店内の照明で撮ろうとしたけど暗くって」

「そんなわけで、うまく撮れませんでした。悔しいです」

って、言い訳しまくっちゃいました! すいません!

 

もうね、徹頭徹尾、人のせいにしてた。
「あたしは頑張ったんですけどー」見たいな言い草で。

ほんっと、惨めの上塗りよね。
しょぼーん。

 

翌日、写真のデータをPCに移して、料理長に見てもらったのですが。

「使えるのはありませんね」

って、オールNGをくらっちゃいました。

やっぱり。ふーう。

しょぼーん!!

 

せっかくのチャンスだったのになー。
あたし一人の撮影だったら、絶対に出てこない豪華なお料理だったんだけどなー。
上手く撮れなかった…。
一枚も、使ってもらえなかったよ。

悔しい、悲しい。気持ちのやり場がない。

 

もやもやした気持ちを持て余すあまりに…。

オープン前の準備に余念がない料理長につきまとって、

フェイスブックの写真は販促と違うイメージで、って言われたけど難しい」とか、

「冷めちゃう前に、出来立てをすぐ撮りたかった」とか、

愚痴とも不満ともつかないことを、ぐずぐずだらだら言ってたら…。


「来週、フェイスブック用に、炭を起して肉を焼きます。焼けたらすぐに撮って下さい」

って、料理長(かっこいい)が!!

 

ええー!!
マジで?!

ちょっとー!

料理長、超絶かっこいいじゃーん。

さっすがー!

もー、あやうく惚れるところだったわよー!

 

でもね、うちに帰って、落ち着いてよく考えたらね。
あたし、「もう一回チャンス作れ」と言わんばかりのつきまといっぷりだったのよね。

調理長、単に、あたしが怖かったのかもしれないわー。

なんか…

すみませんっ!

 

ま、何はともあれ。
めでたく後日、お肉の再撮影しました。
このときの料理長、料理のレイアウトから背景の調整、構図決めまで
ぜーんぶやってくれて、しかも、焼いたお肉を食べさせてくれる、
っていう見事な男っぷりでしたのよ、奥さん!


このお肉ってね。
産地から取り寄せたブランド豚を、炭火でじんわり焼いてるんだよーん。
肉質がいいから、油の一滴まで美味しいよ!


気を良くした富士子(45歳)は、いっそう仕事に励んでます。

何があっても、七転び八起き。
えいえい、おー!