おばさんバイト、新宿二丁目の友達を語る
バイト生活で糊口をしのぐ、富士子(45歳)です。
居酒屋の厨房で仕込みのバイトを始めて、はや半年。
仕込みのバイトだけでも、ヒイヒイ言っているのに…
なんと、居酒屋のホールでも働き始めました。
新宿三丁目の歴史ある寄席、末広亭そばの「しゃかりき」(仮名)っていうお店。
で、初日のデビュー戦、いきなりビールグラスを派手に割りました。
2個ほど。
いやー、手を怪我しなくて、良かったー!
ラッキー!
じゃないッスよね…。
ごめんなさい。反省してます。
今後、気をつけます。
「しゃかりき」(仮名)は、あたしの知り合いがやっている居酒屋さん。
どこ方面の知合いかって言うとね。
世界に名だたるゲイタウン、新宿二丁目の知合いなのよ!
都会で働く女性にとって、いなくてもいいけどいればありがたいのが、ゲイの友だち。
これって、実は世界共通のひそかな常識よ。
だってね。
女の人生を考えてみて!
中学高校時代は、無邪気に誰とも仲良しだった私もあなたも、
大学を経て彼氏が出来て、やがて就職をするわけでしょ。
結婚するだのしないだの、仕事辞めるだの続けるだの、子どもはどうする問題だの、
20代で色んな選択肢が降りかかってくるわけよ。
あれこれ悩むうちは、仲良しの私とあなたでいられたけど、
それぞれに違う選択をしていくうちに、だんだん、違う道を歩むようになるわけ。
仕事一択キャリアウーマン路線、あっさり専業主婦路線、共働きの子育て路線…。
キャリアウーマン路線は、自分の資質と仕事が合っているのか悩んだり、男子ほど評価されない現実にぶち当たったり、長引く不倫に消耗したり、その路線ならではのしんどさがあるわけ。
あっさり専業主婦路線も、子どもの進学にハゲが出来るほど悩んだり、深刻なセックスレス問題に破れかぶれになったり、夫の愛人騒動に追い討ちをかけられたり、色々あるわけ。
共働き路線だってね、時間に追われて自分を見失いがちだったり、子どもに目配りが行き届かなくて学校の先生に怒られたり、そうまでして働いてても子持ちは評価低かったり、もちろん、セックスレス問題はこの路線でも定番で、悩みは尽きないわけ。
結婚してれば、不妊治療を始める子もいるし。
30代にもなれば、それぞれに、得たもの、失ったものがはっきりしてきちゃう。
で、失ったもの、得られなかったものが諦められなかったりするのも、また30代。
順調なのか不調なのかよくわからないし、不安がないと言えば嘘になる。
女の人生すごろく真っ最中の、不安定シーズン。
こういう時期ってね。
うっかり本当の悩みを打ち明けづらかったりするのよ、女同士って。
本音でしゃべってると、思わぬ一言が痛恨の一撃だったりするからね、お互い。
心ならずも、相手の繊細な部分を傷つけちゃうかもしれない。
思いがけず、自分の弱い部分が傷ついちゃうかもしれない。
結局「大事な友達だからこそ、つかず離れずが一番いい」ってことになりがち…。
久しぶりに会っても、当たり障りのない近況報告になっちゃったり、ね。
それが、ちょっと寂しかったりして…。
ふうー…。
そんな、酸いも甘いも苦いも食らわざるを得ない、人生の怒涛シーズンにこそ!
はい、ゲイの友だちの登場ですよ!
何の気負いもてらいもなく、二丁目で待ち合わせして、ガーッと酒飲んで、
やってらんないのよー!!(仕事が、世間が)って、管を巻く!
二丁目で知り合ったゲイ友なら、そもそも自分で飲み歩くだけの経済力はあるわけよ。しかも、ノンケ男と違って、こっちがボトルを入れたところで「女の癖に」とか、いちいち思わない。
その上、年齢が近ければ、仕事の悩みもわりと共通してる。
社会的には男性だけど、目線は女性だったりするから、
「こんな同僚(女子)、こんな上司(男子)にウンザリ」
っていう愚痴も、もう、バッチリ理解してくれるわけ。
調子に乗って毒を吐いてると、「あんたも相当ヤな女だけどねっ!」って釘を刺してくれるのも、ゲイ友のありがたいところね。
セックスレス問題ときた日には、もう、大喜びで聞いてくれちゃう。
「夫婦110番」の時間よーっ!
って、知らない人まで回答を寄せてくれて、異様に盛り上がります。
その上ね、子どもネタも、結構イケるのよ。
自分たちが子どもだったときのエピソードを聞かせてくれて、
「それでもこうして立派に育ってるのわよ」、って励ましてくれたりして。
「立派」って、結構、意味が広いんだわ、って気づかされます。
仕事と家事の両立、なんて苦労も、「へえー大変だけどあんた幸せじゃないがんばりな」って、すんごく気のない感じで励ましてくれるわけ。その「どうでもいいんだけど、一応ねぎらってあげる」っていう励ましを聞いてると、本当にどうでもよくなってくるから不思議!
「自分で選んだんだし、しょうがないじゃない」って、身も蓋もないこと言われもするけど、変えようもない現実は受け入れるしかないよね、って、素直に思えてくるのよ。
もちろん、ファッションや音楽、お得なお買い物情報、お料理や洗濯と言った家事ネタ、あらゆる雑談を、いつまでもしゃべり続けてられるわよ。
女のおしゃべりは長いからねー。エンドレスよー!
そんなわけで、とってもありがたいんです。ゲイの友だち。
もちろん、ゲイ友一人ひとりだって、人生の酸い甘い苦いを経験してるし、
もしかしたら、その辺の女子以上のシンドさを抱えてるんだと思うわ。
だから、わかるわかる、って共感しあう癒し効果を、強く感じてるのかもしれないわね。
それに、女子とゲイとは似通ってるところが多いとはいえ、やっぱり性別が違う。
だから、あまり競合しないのよ。
お互い、僻んだり妬んだりすることがないの。
わりと無責任に、お互いを励ましたり褒めたり、時には貶したりして、楽しんでるの。
あたしは、結構、大事にしてます。ゲイ友。
彼らとは、かれこれ15年以上のつきあい。
二丁目に出向かなくても、家飲みで人生を語り合う熟成期に入ってます。
でもって、あたしの夜のバイト先「しゃかりき」(仮名)。
超働きやすいです!
先輩方もゲイ率が高くて、当然ハートは女子。
ヒマなときのお喋りも、超楽しい!
問題はね…。
肝心の仕事が、すごく辛いっ…!ってことです。
メニューを覚えられないし、ホールで注文取るのに、すごくテンパってる。
生ビールを注ぐのが、すんごく苦手。泡ばっかり。
チューハイやらハイボールを作るとか、もう、ホント無理。
でもね、せっかくだからね、頑張ります…。
それからね、セックスレスとか子どもの悩みとか、あたし個人のことじゃないですよ。
念のため。
いや、ホントに!
今日のバイトは、厨房の仕込です。
きゃー!
料理長(かっこいい)ー!
待っててねー!
あたし頑張るからー!!
(二丁目モード)