裏の厨房で反省してます

許して アタシのでたらめ人生

おばさんバイト、自分としては春な夜

 

すっかり春爛漫ですね。

新宿御苑は桜が満開!

大型バスがじゃんじゃんやって来て、観光客がいっぱいです。

 

あたしのバイト先の居酒屋は、大きなビルに挟まれて日が入りません。

日差しの暖かさもわかんないし、桜の花も見えない。

 

でもね!

きれいな薄茶色の筍、瑞々しいえんどう豆、大きな桜色の鯛などが、

毎日のように厨房に届くから、いつも春の気配が一杯。

 

問題は、あたしに、いつ、春がやってくるのか?

っつーことですよ。

 

天才バカボン」のエンディングに「41歳の春だから」っていう名曲があるんですけど、今年はあたしの「45歳の春」なはず。

バカボンのパパを、ぐっと上回る春が来てもいいはず。

 

そう思いながら、仕込みの仕事を頑張ってる今日この頃ですが。

 

今日は、割と調子よくイベリコ豚をカットできました!

どれも、ぴったりな大きさでカットして串に刺せた。

コンスタントに40gで仕上がった。

一歩成長できた春になった!

イエイ!

 

残念だったのは、スモーク20本をすっかり忘れていたことです。

料理長が遅番で留守だったので、まかないを食べた後に、そそくさと残業して

スモーキングしました。ほっ!

 

暖かくなってくるだけで、身も心も軽くなるもんだけど、

やっぱり、区切りになるようなステップを踏んで、手ごたえを感じてこそ、

春を迎えた、新しい気持ちになるよね。

 

今日はイベリコがうまく出来ただけでも嬉しかったです。

 

そんなしだいで、珍しくビールを開けていい気分!

 

明日は雨みたい。

桜の花びら、落ちちゃうかなぁ。

それでもバイト、頑張るぞー。

 

 

おばさんバイト、僻み節

 

大変!

新宿は、桜がほぼ満開よ。

週末を待ってられないわ。お花見お花見!

 

特にお花見に行く相手がいるわけでもない、富士子(45歳)です。

居酒屋の厨房でバイトしています。

日曜日はお休みなんですけど、ヒマなもんで、ちょいちょい出勤してます。

 

 

今日、バイトに行ったら、2階フロアで料理長が死んでました。

朝まで飲んでたみたいです。

 

あたしが串の補充をするのも2階なんですけど、

あたしからは、寝込んでる料理長の、ちょうど足だけが見える。

ピクリともしないし爆睡してるようので、心置きなく、

バットや洗浄機で、ガンガン騒音出してやりました。

 

昨夜、ホールでバイトしてる学生さん二人が卒業で辞めてしまうので

送別会があったそうです。

あたしはね、ホールの子たちとは、殆ど面識がないの。

顔を合わせるのは、仕込み時間にホールで準備してるほんの数人だけ。

当然、送別会なんて、あることさえ知らない。

 

そもそも、一番おしゃべりしていたキッチン男子・大久保くんが辞める時さえ、

まったく声がかからなかった、っつー、孤高のパートですからね。

 

まあね、ホールの子なんて、みんな20~23歳くらいだから、あたしなんて母親みたいなもんですよ。飲みの席で一緒になっても、こっちも困っちゃうんですけどね。

 

でもね。

 

一時間もグーグー寝ておいて、

「いやー、今日は富士子さんがいてくれて助かりました。休めました。」

って、あんた(料理長)。

 

あたしを仲間外れにしといて、何言ってんの?

休んでんじゃないわよ。

 

 

なーんて、口が裂けても言えない。

 

かといって、

「休めました? 良かったー。お役に立てて嬉しいです!」

なんて、とっさに言えるほど器用じゃねーし。

そんなうそが上手だったら、会社クビになったりしないっつーの。

 

で、

「そうなんですか。何が起きてるのかわかんないですけど」

って、言っておきました。

 

この可愛げのなさ。

あたしが上司だったら、クビにしたくなるね。

 

 

料理長が寝ている間、キッチン男子・埼玉くん(仮名)に、

「ホールの子と朝まで宴会なんて、みんな仲いいですね」

って話してたら、

「キッチンとホールは接点少ないんですけど、飲み会で仲良くなりますね」

だって。

 

ってことは、よ。

飲み会に一度も誘われない孤高のパートは、誰かと仲良くなるチャンスは皆無。

ずっと孤高。

 

ま、あたしも大人の女性ですからね。

ババアと飲みたくないって気持ちを汲む余裕は、たっぷりありますよ。

むしろ、孤高って言葉が似合うよう、誇り高く生きていきます。

 

そんなわけで。

 

今日の仕込みもベーコンが間に合わなかったんですが、

「出来ておりませんので」

って、頭を高く上げて料理長にお伝えして、帰ってまいりました。

 

感じわるー!

 

明日も、バイトだー。

帰り道は、孤高のお花見散歩してきちゃおっと。

 

おばさんバイト、こっそり残業作戦が失敗

 

暖かくなってきて、新宿御苑の桜もいい感じ!

居酒屋厨房で働く、富士子(45歳)です。

わりと、頭の中がお花で一杯です。

 

世間は、送別会真っ盛り。

昨日は花の金曜日だったから、バイト先の居酒屋も、まさかの40名の宴会予約!

仕込みの指示はね…

 

椎茸、獅子唐、アスパラ、エリンギ、イベリコ豚、ベーコン、豚のスモーク30本。

 

怒涛のラインナップ。

無理ッス!

これね、全部の材料を処理して、串に刺すのよ。

ただでさえ、宴会40人分の串の用意があるのに。

大急ぎでやんなきゃ! って取り掛かったけど……。

 

宴会用の串の用意と、通常の串の補充 

→ これだけで 早くも1時間経過。

椎茸の軸を取って、獅子唐のヘタを取って、串打ちして、アスパラをカット 

→ さらに1時間経過、やれやれ。

アスパラを串に刺して、エリンギをカットして串打ち

→ あっという間にまた1時間経過。もう終わってなきゃいけない時間。

 

あああ、どうしよう、終わんない。

この頃、厨房はすでに…

 

料理長が、イカの塩辛の下拵え終わってる。

ルドルフ先輩はサラダを終わって、デザートの生地もオーブンに入れた。

なんと、キッチン男子・アントニオが、普段より早くまかない作り終わってる。

 

超ヤバイ!

あたしだけ終わってないよ!

 

でも大丈夫。

「まかない敬遠戦法 富士子大作戦」いくから。

 

 

厨房には、「暗黙のまかないルール」があります。

・料理長(かっこいい)の「頂きます」を合図に、みんな一緒に食べる

 

あたしは、このルールが大好き。

キッチン男子は仕込み中は無口で、黙々と手を動かすばかりだし、食事中も殆ど口を利かないけど、それでも、料理長を筆頭にして同じ釜の飯を食ってます、っていう一体感があるのは、このシンプルなルールのおかげだと思うの。

だからね、あたしの中では「このルールは破っちゃならねえ」ってことになってた。

 

でもね、みんな一緒に食べるためには、全員がまかない時間までに仕事を終える、もしくは区切りをつけてないといけません。

 

だけど、あたしだけ間に合わないってことが、よくある。

 

そうなると、

・料理長が手伝ってくれる。

・あたしが終わるまで、みんな仕事探して時間つぶして待ってる

この、どっちかの対応をされるわけ。

これってねえ、かなりな、針のむしろなわけ。

 

で、考えたの。

「まかない、食べません」って言っておけば、食べる人たちだけで先に食べてくれるんじゃないか、って!

 

あたしの作戦はこうよ。

 

あらかじめ、「今日はまかない食べません」と宣言しておく。

まかない時間が近づくと、まかないの準備を手伝う風に、お箸とか運んだりする。

で、お皿が並び始める頃には、厨房の裏に引っ込んで、気配を消す。

「富士子さんはもう帰るんだな」って油断した料理長が、「いただきます」を言う。

みんなが食べ始める。

厨房の裏で、こっそり、仕込みの続きをやる。

終わったら、何食わぬ顔で厨房から出て「お先に失礼します」と言って帰る。

 

どうよ。

完璧でしょ。

誰にも負担をかけずに、こっそり残業ができるの。名づけて「まかない敬遠戦法」。

過去に何度か成功している、あたしのマル秘大作戦よ!

 

昨日も、怒涛の仕込みメモを見て、こりゃあ残業だ、と「まかない敬遠」発動。

速攻で「まかない食べません」宣言出しといた。

まかない時間が迫る頃は、野菜系の仕込みは終わってて、あとは肉系を残すのみ。

余裕の笑顔で、お箸を揃えたりお皿を出したりして、「しめしめ、この調子で油断させて、一人で奥に引っ込んで、こっそり仕事しよ……まずはスモークから!」

 

と、思ってるのに、今日に限って、料理長がこんにゃくを切り始めた。

 

ちょっと。

アントニオが作ったまかないが、冷めちゃうよ。鶏もも肉の照り焼きだよー。

早く食べなよー、食べなってばー。

 

そしたら、ルドルフ先輩が新たにお菓子の生地を練り始めて、当のアントニオも、何かの下味用の調合液を作り始めるじゃないの!

 

えええー!

ちょ、ちょ、ちょっと待って。おにーさん!

ラッスンゴレライ、まってまっすん。

 

とか言ってる場合ではない。

気配を消すどころじゃなくなって、あたしも慌てて、フライパン出してスモークの用意。

 

あれれ?

まかない、食べないの? いつもと違うなあ。

 

って思いながら、大慌てでスモークを終えて、フライパンを洗ってたら、料理長が、

 

「富士子さん、それ洗い終わったら、おしまいにして下さい」

 

って、まさかの「もう帰んなさい宣言」。

 

げげっ!

作戦失敗!?

 

あーあ、でも、まだ、イベリコ豚とベーコンが残ってるんだよなあ…。

言いづらい…。

超、言いづらいッス…。

 

でも、ま、意を決して、

「あ、あの、イベリコとベーコンがまだ…」

 

つったら、料理長、

「え? ああ。出しといて下さい。やりますから」

 

「す、すみません…」

 

あーあ。

失敗しちゃった。

こっそり残業して、間に合わせようと思ってたのに。

やっぱり、ちゃんと時間内に終わらせなきゃダメなんだなー。

 

 

そもそも、まかないは、みんなが一緒に食べることが大事な約束になってる。

誰かが食べずに仕事しているのを、料理長がよしとするはずがない。

いやあ、わかってたんですけどね。

 

 

あたしだってね。

みんなで一緒に食べる「まかないルール」、大好きなのよ。

気兼ねなく、一緒に食べたいんだけどね。

終わんないのよ、仕事が!

もうね、手が遅いことがね、すごい、負い目なわけ。

だからね、ちょっと、こっすい作戦で乗り切ってたんですけどね。

うまく行ってる、って思ってたんですけどね。

バレてたみたいです。

 

 

ま、思えば、阿呆な作戦ではあったかもしれない。

「こいつの頭はお花畑か?」って思われていたかもしれない。

とほほ。

春だから許して。

 

 

あーあ、もう、いやんなっちゃうな。

仕事が速くできるようになりたい。

台所の神様、助けて下さい。

って、どっかに台所大明神っていないのかな?

お参りに行きたい。

 

明日は、春うららな日曜日。

富士子はバイトです。がんばります。

 

 

おばさんパートです。肉のカットが出来ず困っています。

 

 

sinjyukufujikoさん

                             2016/03/27 00:09:50

 

居酒屋のキッチンで、仕込みのパートをしている富士子(45歳)といいます。

もう、5ヶ月目になるのですが、未だに肉のカットが上手くできずに困っています。

主な仕事は、野菜を串に刺したり、串焼きの串の補充などです。たまに、肉をカットして串に刺す仕事を頼まれますが、なかなか、先輩のお手本どおりに出来ません。カットする肉の向きがわからなくなったり、肉がうまく刺さらなくて力を入れて崩れたり、そのつど先輩を呼ぶわけにも行かず、困っています。どうしたら上手くなるでしょうか。

 

                           閲覧数:0   回答数:0

 

 

yahoo知恵袋が好きな人手を挙げてー!

はーい!

 

新聞の人生相談も面白いですが、いかんせん、回答者が真面目でまっとう過ぎ。

その点、質問者も回答者も混迷を極めるyahoo知恵袋は、思いがけない質問に予想もしない回答が寄せられたりして、暇つぶしにはうってつけです。

 

この前、「厨房で働いているけど上手く魚がさばけない」という質問を発見して、心から驚いたわ。んなこと、ネットで質問するか。回答も「ここで聞いてんじゃねえよ、職場で聞いて来い」ってのが殆どだったけど、チラホラと「僕も苦手です」「こうするといいです」「がんばりましょう!」的な回答もあって、そういうのがベストアンサーに選ばれてた。

ああ、yahoo知恵袋って、コミュニケーションツールでもあったのね。

って、おばちゃんは、目からうろこだったわ。

 

でもって、あたしが苦手なのは、イベリコ豚のカットです。

ここ4ヶ月くらい、ずっと課題ですよ。

1回で扱うイベリコ豚は800gくらい。

それを一口大にカットして、1本につき40gを串に刺して、約20本仕上げるの。

金髪の天使くんは、15分もあれば仕上げちゃうんだけど…。

 

あたしね、昨日、こっそりipodのストップウォッチ機能を使って計ったのよ。

そしたらね、45分かかってた。45分よ。

時間帯から言うと、そうね、4時間目の授業まるまるイベリコ豚、ってところね。

そこ何やってんだー!って、チョークが飛んでくるレベルです。

 

今日は金曜日だから、結構、イベリコ豚は出ると思うの。

だからね、仕込みの指示があると思う…。気が重い…。

せめて、35分を目標にがんばってきます。

 

がんばれ富士子! えいえい、おー!

おばさんバイト、料理長のまかないに興奮!

 

寒の戻りっていうんですか、寒いですよ、新宿は。

でもね、ビシっとガーリックの効いたパスタで、身も心も温かい富士子(45歳)です。

居酒屋厨房でバイトしてます。

 

今日はね。いいことがあったの!!

 

新人ながら、フライパン使いが堂に入っているキッチン男子・アントニオ。

すでに他店で10年近い調理経験を積むベテランで、料理長にも当てにされてる。

彼の作るまかないが美味しいもんだから、あたしも密かにファン。

ただ、意外と華奢で、ちょいちょい、休むのよね。今日も発熱で、突然のお休み。

 

えー!アントニオ、来ないのー!

今日、まかない当番だったじゃーん。楽しみだったのに…。

 

って、ちょっとやる気をなくした富士子(45歳)でしたが。

 

お昼時になって、料理長(かっこいい)が、

「今日、富士子さんお昼食べます?」って聞いてくるじゃない。

 

あらん? どういうこと?

料理長が作るってこと? まかないを? 食べる食べますよ食べるわよもちろん!

 

「はいっ!」って元気良くお返事しました。いえーい!

 

まかない当番は、メインのキッチン男子が交代で務めてるんだけど、料理長はローテーションに入っていません。あのね、料理長のお料理を食べたかったらね、お金を払ってですね、お客さんとして来ないとダメなの。まかないは、作らないの。なんたって、キッチン番長ですからね。あたしは、かれこれ5ヶ月働いてますけどね、一回も食べたことないです、料理長のまかない。唯一、お正月のお雑煮を頂いたくらいです。

このときの感動は → 料理長のお雑煮が出た

 

そんなキッチン番長が、満を持して(代打で)作るまかない!

もう、そわそわしちゃって、椎茸を串に刺すどころじゃありません。

 

バットを取りに行く。

ボールを洗いに行く。

スモークするため(と見せかけて)ガス台の空きを見に行く。

 

なにかっつーと、裏の厨房を覗きに行っては、料理長の動きをチェキ。

その他大勢のキッチン男子(失礼)に、うっとおしいと思われても気にしない!

 

大きなフライパンにたっぷりのオリーブオイル。

中には、刻まれたにんにくと、つやつやした赤唐辛子がちりちりしてる。

バットには、いろんな種類のきのこが、いかにも食べやすい様子にほぐされてる。

大きな寸胴鍋に、たっぷりのお湯が沸いて、中にパスタがゆらゆらしてる。

 

ああ、このにんにくは、素早く静かに魔法みたいに刻まれたに違いない。あの唐辛子だって、唐辛子も気が付かないうちに、一瞬で種を取り除かれてフライパンに入れられたに違いない。たくさんのきのこは、細くて長い指で、なにもしていないみたいに、優しくほぐされたに違いない。パスタだって、きっかり人数分の量だけ、何も考えていないみたいに無造作に取り出されて、お鍋にそっと入れられたに違いない。いつだって、料理長のお料理の仕方は、静かで優しくて、さりげないのだ。

 

ああ、きのこスパゲッティ作ってるんだ! 早く食べたいようー。

だって、料理長(かっこいい)が作ってるんだもん!!

 

………。

あたしが、いかに自分の仕事に集中していなかったか、お分かり頂けたでしょうか。

獅子唐もポロ葱も、普段なら大きさ揃えたり分量調整したりするんだけど、ま、だいたいのところで済ませちゃって、残ってた椎茸もラップして強制終了して準備完了。

いつでも食べられるよう待機! ビシッ!

 

 

厨房では、料理長が大きなフライパンを事も無げに片手で持って、パスタをお皿に移していきます。キッチン男子・スズキくん(初登場)がやってきて運ぼうとすると、

 

「まだ! 盛り付け終わってねえよっ」って料理長が。

 

実はね、料理長、すごく言葉遣いが雑です。可愛がってる後輩には、特にキツイ。

 

「持ってくんじゃねえぞ、まだ!」って言いながら、海苔と大葉を乗せていきます。

 

ああ、この糸みたいに細く切られた大葉!包丁を小さく早く動して、大葉も何が起きてるかわからないうちに、ふわふわにされたに違いない。

 

と思っているうちに、スズキくんが完成したお皿を運んできます。

 

「この大きいお皿は、天使くんね」って、料理長。

 

キッチン男子・天使くん、ご飯はあまり食べないけどパスタは大量にいける。料理長はそんな天使くんに、大盛りによそってたの。そういうところも、美味しい感じ!

 

みんなが席について、料理長が「いただきます」って言って、わーい!ごはんだ!

 

海苔と大葉がふんわりたくさん乗っかって、熱々のパスタはコシがあって、きのこも歯ごたえが残ってて、美味しい!ちょっと濃い目の味ににんにくが効いて、寒い厨房で冷えた体がみるみるあったまる。

 

マジですか?超美味しいんですけど。ああ、あたし、これバケツ一杯食べられるわ!

 

途中から、ちょっと記憶がありません。食べるのに集中しすぎて。ホント美味しかった。

 

おなか一杯になって、満足して椅子にふんぞり返って、一息ついて、ふと見ると。

隣のスズキくん、小皿にたくさんの唐辛子をよけてる。

あたしも天使くんも、スパゲッティに唐辛子は一本も入ってなかったのに。

料理長、可愛がってるスズキくんのお皿にだけ、全部の唐辛子を混ぜてたみたいです。

 

こんないたずらも、一瞬のうちにやったに違いない!

 

料理長(かっこいい)の魅力満載の美味しいひと時でした。

 

ちょっと不思議だったのはね…。

お箸で食べたのよね、きのこスパゲッティを。

当然のようにお箸が出て、ごく自然に全員がお箸で食べてるの。

「あ、フォーク出さなきゃ」とか、誰も言わない。ま、あたしも言えなかったよね。

なんで、おそば食べるみたいに、啜って食べました。

これね、スープが絡んだまま口に入るし、ぐいぐい食べられて案外悪くなかったです。

スズキくんも、唐辛子をよけやすかったと思う(笑)

 

 

さ、今度はいつ、まかない当番が突然休むかしら?

よこしまな楽しみが増えました。へへへっ!

 

さ、寒さに負けず、お仕事がんばるぞー。

 

 

おばさんバイト、泣き笑いのホワイトデー

  

バレンタインデーに、チョコレート贈った女子は手を上げてー!

はーい、はいはいはーい!

 

バレンタイン当日、出勤していたキッチン男子全員に、きっちりチョコを贈った、

居酒屋厨房バイトの富士子(45歳)です。

義理とはいえ、チョコはチョコですよ。

 

まあ、この年になるとね。

「日ごろの失敗を、世俗のイベントに便乗してまとめて謝っておく」ってのは、「卵は茹でたらすぐに冷水につけておく」ってくらい常識。

数ある世俗イベントの中でも、バレンタインは優秀です。もらった方は、確実に喜んで受け取ってくれるからね。「いつもお世話になってます」の気持ちが、2~3倍になって相手に届いちゃう。職場での多少の失敗も、多めに見てもらえるってもんですよ(多分)。こんな利回りの良い商品、ちょっと他には見当たらない。

 

そんなわけで、先月14日は、しっかりチョコを渡してきました。

 

で、先日のホワイトデー。

土曜日なので、あたしはお休みだったのですが、その前の金曜日にですね。

「お返しです」っつって、料理長(かっこいい)が、たいそうな紙袋を渡してきて。

ロールケーキがホールで入ってたんですよ、奥さん!

しかも伊勢丹で買ってきたって言うじゃありませんか。

 

バレンタイン間近の新宿伊勢丹のお菓子売り場が、阿鼻叫喚の大混雑なのは有名ですが、なんと! 最近はホワイトデー間近の伊勢丹も、ものすごい人出。しかも、押し寄せてくるのは男子。ってか、おっさん。30~40代のおっさん(中から上のスーツ着てる)が、群れを成してやってきて、有名ブランドのお菓子売り場に長蛇の列を作ってるの。

 

で、料理長ですよ。

そんなスーツのおっさんに混ざって、お買い物して下さったなんて!

言っときますが、競馬場じゃないですよ、伊勢丹のスイーツ売り場ですよ。

馬券じゃなくって、ロールケーキ買ってきたんですよ、料理長が。

もう、感激を通り越して、感無量でした。

お返しもらえるなんて、全く考えてなかったしね。

 

しかも、そのロールケーキは、あたしの知らないお店の品だったの。お菓子に目がない45歳女ってのはね、たいていの有名店は制覇してる。適度にヒマもお金もあるからね。デパートに出ているお店は当然として、学芸大学やら鶯谷くんだりまで出向くのも厭わない。そんなあたしが初めて聞くお店。ちょっとドキドキじゃない?

 

あ、これね、「ふーん、聞いたことないわ。たいしたことないんじゃない?美味しくなかったらどうしようドキドキ」って意味じゃないのよ、念のため。「あたしの知らないところに、まだまだ美味しいお菓子がたくさんあるのよ! でもって、これは新しい出会いだわ。やだ、ドキドキだわん」って意味なのよ。しかも、料理長(かっこいい)から貰ったんだもん。伊勢丹なら間違いない、って信頼もあって、心のそこから「うわーい!」って嬉しかった。

 

お店のロゴも紙袋も、白を基調に薄いグレーを使ったきれいな幾何学模様で、ロールケーキもきっとシンプルかつ極上な味に違いない、と思わせる、上品なデザイン。

ああ、ワクワクする。早く食べたい…と思いながら眺めていたら。

 

伊勢丹、凄かったッスよ、混んでて。あんなに混んでると思わなかった。時間かかりそうだったから、一番人がいない、空いてるところで買いましたよ。あははっ!」

 

って、料理長が無邪気に。

 

そ、そっすか…。

た、たしかに、激混みですもんね。

萎えますよね、普通。

面倒っすよね。

良かったのに。

別に、無理して買わなくて良かったのに。

あたしなんかに。

 

ああ、どうして?

嬉しかった気持ちが、みるみるしぼんで、辛いものがこみ上げてくる。

 

 

あああ、なんか、音がする。

開けちゃいけない、心の扉が開く音がする…

 

 

 前の会社をクビになったことを思い出した。

あたしをクビにした女社長は、最後の日に送別会を開いた。

仲良くしてた社員たちも交えての、お別れの食事会。お世話になったお礼の気持ちを形にしようと思って、あたしは、一人ひとりに贈り物を用意した。 あれがいいかな、これなら喜んでもらえるかな、って、相手のことを考えて選ぶのは楽しくて、別れるつらさを忘れるほどだった。でも、送別会が終わって、一人で家に帰りながら考えた。気持ちをこめた贈り物だったけど、受け取ったほうはどうだっただろう? クビになった本人から、笑顔で贈り物を渡されても、みんなは複雑な気分だったんじゃないか…。規定がないとやらで退職金もなく、次の仕事の見通しも立たない中年女が、一人ずつに贈り物を渡す姿は相当イタかったんじゃないか…。そもそも、そんな贈り物をすること自体が、「あたしはクビになっちゃったけど、実際は心優しい人間なんですよー」っていうアピールで、「ほら、こんなにみんなのことを考えて感謝してますよー」っていう押し付けだったんじゃないだろうか…。こういう自己満足な行動をするから、クビになったのかも…。あたしのやることは、いつだって独りよがりなんだ…。

 

そんな思い出が蘇って、次々と、後ろ向きの考えが頭に浮かんでしまう。 

 

バレンタインだって独りよがりだったんだ。あたしを雇ってくれた料理長には心から感謝してる。だから、世界で一番美味しいと思うチョコを用意した。美味しく食べてもらえたらそれで良かったはずだった。今の今まで、そう思ってた。なのに、「一番人がいない、空いているお店のお菓子」って言葉が、胸に突き刺さっちゃってなかなか取れない。独りよがりで押し付けがましいあたしには、そういうお菓子がちょうどいい、って言われたみたいだ。あたしがどんなに誰かのことを思っても、あたしに渡されるのは、間に合わせのお菓子だったり、退職勧告だったりするんだ。

 

クビを言い渡されたとき、こう言われた。「もう耐えられない」。あたしは、女社長に嫌われたのだ。仕事で重大なミスをしたわけじゃない。他の社員や取引先とトラブルを起したわけでもない。3年前、あたしを見込んで社員にしてくれたのは、当の女社長だった。その恩に報いようと、全力を尽くしたつもりだったけど、すべてが裏目に出て、あたしはクビになったのだった。

 

世界で一番美味しいチョコを渡しても、返ってきたのは間に合わせのお菓子。

「そうなのよね。前にもこういうことがあったよね。誰かのために全力で仕事したはずなのに、クビになったの。あたしって、いっつもそう。」

誰に言うともなく、部屋で一人で声を出したら、ますます本当に「いっつもそう」なように思えてきた。あたしがやったことには、何の値打ちもなかった。そんな暗い考えが沸き起こって、気持ちが沈んでいく。全力を尽くした? それが何だったの? そもそも、あたしそのものに、何の値打ちもなかった、ってことだよ。誰も、あたしの全力だの感謝の気持ちだの、必要じゃなかったんだから。何をしたところで、最初から、あたしに、値打ちがなかったんだ。 

惨めな気持ちが溢れてきて、心が小さく縮んで、呼吸が浅くなって、涙が出てくる。

クビになったのは1年前。忘れていたつもりでも、まだ最近のことなのだ。

 

 

 

もーねー。

こうなっちゃうとねー。

なかなか、リカバリーできないのよね。

子どもじみた被害妄想と青くさい自意識だって、頭ではわかっていても、悲しくてね。

 

で、ひとしきり泣いたらおなかが空いちゃって。

 顔を上げたら、目の前にロールケーキが!

もはや、いわくつき(になってしまった)料理長のロールケーキ。

 もう夕暮れで、部屋には西日が一杯に差し込んでる。ああ、クリームが溶けちゃう!

慌てて鼻をかんで、お茶を淹れて、ケーキを切った。

やれやれ、って思いながら一口食べて……、思わずケーキを二度見!

やだ、ものすごく美味しい!

 

スポンジが超柔らかいんだけど、きめが細かくてフカフカしてないの。かといって、しっとりじゃないの。ちゃんと、ふわふわなの。とろけるような食感でもなくて、しっかりした質感もあるの。クリームも、美味しいこってり感があるけど、しつこくないの。

あたし、これ丸ごといけちゃうかも!

堂島ロール(も大好きだけど、それ)よりずっと好き。美味しいー!!

マジかー! 嬉しいー! 極上のロールケーキじゃん。

 

食べながら、また涙が出てきちゃった。

これが、間に合わせのお菓子の訳ないじゃん。

ロールケーキはロールケーキだよ。余計な意味なんてないよ。

「間に合わせ」なんて、自分で勝手につけただけだ。

意味をつけちゃうなんて、ばかばかしいよ。

そう思えてきて、可笑しくて笑い泣きしちゃった。

 

そもそも、あの料理長が場外(馬券売り場)じゃなくて、伊勢丹に行ったんだよ。ってか、ホワイトデーとか覚えてたんだよ。すごくない? 

で、買ってきたのが、こんなに美味しいロールケーキ。すんごいグッジョブじゃない?

 

ロールケーキがあまりに美味しくて、ものすごく前向きな気分になってきた。

 

はっきり言うけど、料理長は、あたしのために、ケーキ買ってきたんだよ。

ってことは、よ。あたしって、それなりに値打ちがあるんじゃない?

もしかしてだけど。

 

ああ、ロールケーキ美味しい。嬉しい。西日までが優しく暖かくって、幸せな気分になってきた。

 

第一、クビになったのって、今のあたしの値打ちと何か関係ある?

今のあたしは、料理の仕事をしてて、ちょっと出来が悪くて、でもそんな毎日をブログに書いて楽しんでて、チョコを渡したくなる先輩や上司がいて、あろうことか、憧れの料理長(かっこいい)にロールケーキ貰ってこうして食べてるのよ。クビになったとか、お金がないとか、もう、どうでもよくない? 美味しく食べる邪魔になるだけよ。そりゃあね、あたしに値打ちを感じない人はあたしをクビにするでしょうよ。でもね、今のところはね、この美味しいロールケーキを貰える程度には値打ちがあるのよ、あたしだって。そこを見誤っちゃダメよ、富士子。だいたいから、どうして、クビになったからって、値打ちがないってことになるのよ? バカじゃないの? 女社長は人の値打ちを決められるほど偉かったの? 神様なの? あんたは信者なの?違うじゃない! クビになったくらいで、卑屈になるんじゃないわよ、富士子! 

 

あまりに美味しくて、前向きどころか強気になってくる始末。

このまま、ジョギングでもしてくるかっ! ってくらい、パワーがみなぎってきた。

 

で、ゆっくり時間をかけてロールケーキを味わって、気が付くと3分の2本も食べちゃって、すっかりお腹も気持ちも満たされて、そのまま昼寝をしました。なんだか幸せな気持ちで、うとうとしながら「このまま死んで、天使になってもいい」って思いました。

 

で、すごく寒くて目が覚めて、気が付いたら朝でした。

 

 

 

猛烈に、アップダウンが激しかった、あたしのホワイトデー。

古傷を抉っておきながら、幸せな昼寝に導いてくれたロールケーキ(と料理長)。

ちょっと、忘れられない一日になりそうです。

 

翌日、当たり前のことながら、当の料理長は全く持って普段どおりで、金髪バイトの天使くんと「火属性のキャラがどーのこーの」とパズドラの話で盛り上がってました。

すべて世は事もなし。

 

 

思い出したくない過去やどうしようもない自己嫌悪って、振り払ってもまとわりついてくる面倒なものだよね。そんな時は、美味しいものを食べるのがおススメです。思い切り泣いてお腹が空いた後だと、効果的です。

美味しいものは人生の伴侶。これ、マメ知識ですよ。

 

明日もバイトだー。

こんな時間になっちゃった。寝よう。

 

 

 

おばさんバイト、水晶体に気を取られて反省

 

風が強いですね、新宿は冬に逆戻り!

身も心もふところも寒い、富士子(45歳)です。

 

先日のこと。

バイト先の居酒屋厨房で、金髪のキッチン男子・天使くんが、鯛をさばいていました。

鯛なんて、日ごろは見かけないのに、珍しい!

 

「今日、何かあるんですか? 特別な宴会とか?」って聞くと、

「メニューが変わって、お刺身が鯛になるんですよ」とのこと。

 

そうなんだ!

筍に続いて、お魚も春の素材になるんですね。うふふ。

 

それにしても立派な鯛だなぁ…って見惚れていたら。

 

天使くんが、小鼻を膨らませて

「これ、いくらすると思います? 2万ですよ、2万! 天然ですよっ!」

って、どや顔で言うの。

 

天使くんってね。

耳にも眉にもピアスしてる、ミュージシャンを目指してた金髪くん。

パンクロック一直線!って外見で、声をかけるのも憚られるような居ずまい。

しかも、えらい人に話しかけられても、気に入らない話題だと目線も合わせずシカトするっていう、ふてぶてしい根性の持ち主。

 

なのに、よ。

2万の鯛に騒ぐのって、どうよ。

ちょっと小市民過ぎやしませんか。

おばちゃんは、2万の鯛よりも、そっちに驚いたわよ。

 

 

それはさておき。

思いがけない高給食材の登場に、本物の小市民のあたしは確かに驚いた。

「ええ! 天然? すごいじゃないですか!」

と、小市民らしく陳腐な驚き方をしちゃった。

 

ピンクと白とうろこの銀色がぴかぴかしてる鯛は、市場から届いたばかりらしくて、目玉も綺麗に澄んでいる。あたしはその目玉の大きさに心を奪われてしまった。

 

何を隠そう、あたしは魚の目玉が大好き。

これね、賛否両論(っていうのか?)あるんで、今まで内緒にしてたんですけどね。焼き魚でも煮魚でも、目玉をお箸でほじくって丸ごと口に放り込むのって、至福の瞬間なんですよ!

とろんとしたゼリーみたいな食感に、真ん中がコリコリしてて、たまらない!

が、ゲテモノ好き扱いされるのを恐れるあまり、この快感を誰にも打ち明けることなく、はや45年。

 

なのに。

あまりに大きく澄んだ鯛の目玉に気持ちが高まり、内緒にしきれない気分になり…。

「天使くん、魚の目玉って、食べたことあります?」

って、恐る恐る聞いちゃった。

 

したら、天使くん、

「ありますよ、焼いたりして食べます。富士子さん、食べます?持って帰ります?」

って、まさかのお持ち帰りエクスキューズ!

 

自分で聞いておいてなんですが、ごくナチュラルに「目玉食べますよ」発言を聞いてびっくりしちゃった上に、「目玉を持って帰る」なんて予想だにしなかった提案を受けたもんだから、さすがのあたしもちょっと混乱して口がきけなくなっちゃった。

 

それに構わず、天使くんはぐいっ!と親指を入れて目玉をくり貫くと、流しに転がました。ごろん、としたまん丸の白い目玉。

うわ、でかい! 秋刀魚や鯵とは、スケールが違う! こりゃ絶対美味い!

と、心の中で叫ぶ富士子。

 

「こっち側も…」とか言いながら、もう片方もくり貫こうとした天使くんですが…

「あ、失敗!」って声と、プシューって音とともに、何かがあたしのほうに飛んできた。

みると、粘液状のものにまみれた、小さなガラスのかけら。

なんだこれ?

あ、もしかして…

目玉の中の、水晶体?

 

うわぁ!

ちっちゃくて、きれい!

これで、海の中を見てたんだー!

こんな大きな水晶体があるなんて、さすがだなあ。

イカの水晶体は、もっと薄っぺらいもんなぁ…。

 

って、水晶体を灯りにかざしてしみじみ眺めていたら。

 

天使くんが、

「片方失敗しちゃって一個しかないし、やっぱ目玉いらないッスよね。

捨てちゃいましょう」

つって、流しにあった見事な目玉を、あっさりゴミ箱に捨てちゃいました。

 

 

あああ。

せっかくくり貫いてくれたのに、ごめんね…。

目玉、食べたかったし、嬉しかったんだけど、色々ビックリしているうちに、「ありがとう、持って帰る」って言いそびれちゃったの。いっつもドンくさくて、返事が遅くて申し訳ない…。

決して「片方失敗しやがったな、だったらいらねーし」とか思ってたんじゃないよ。

 

天使くんは、鯛をどんどんさばいて、サクにして、きれいにキッチンペーパーで包んでそうっとラップをしていました。職人の顔になって手早く作業する天使くんが、なまじ健気でカッコいいだけに、目玉を捨てさせてしまったのが意地悪をしたみたいで、あたしは自分のドンくささがちょっと悲しかった。天使くんは、全く気にしていないかもしれないけど、あたしは、自分のこういうドンくささが好きではないから、またやっちゃったー、と後悔してる。

 

ふー。

それにしても、鯛の目玉は美味しそうだった…。

水晶体きれいだった…。

で、天使くんはいい奴だ。

小市民なんつって、ごめん。

 

色々反省しとります。

 

明日もバイトだぞっ!

ちょっとは暖かいといいなー。

 

 

おばさんバイトに、っていうか厨房に、春が来た!

 

新宿は、しとしと雨降り。

旅の余韻に浸る間もなく、バイトに明け暮れる富士子(45歳)です。

 

春ですよ!

雨が降ってるし、寒いし、花粉飛びまくりですけど、春が来ました。

なんのことかって言うとね…。

 

この前、仕事が終わって「さあ、お着替えして帰るべー」って、屋上に上がったら。

(ちなみに、更衣室や冷蔵庫や製氷機は屋上にある)

製氷機の前に、どどーんと、寸胴鍋が置いてありました。

 

何これ?

さっきまで、料理長(かっこいい)が厨房で使ってた寸胴じゃん。

しきりに、あくを掬ってたよ、確か。

触ってみると、まだ温かい。

なんでこんなところにあるの?

 

って、ふたを開けてのぞいたら!

ふんわり、サツマイモみたいな匂いがして……泡の中になんかある。

指でつついてみたら、筍ちゃんがユラユラしてました。

そばには、赤みも鮮やかな鷹の爪が浮かんでる。

 

うわあ!筍!

春だわ、春なんだわ!

もうそんな季節なのねー!日本は!(と、海外帰りをアピール)

 

あたしも、自分で筍を茹でたことがあったな。

お風呂のないアパートに住んでたとき、二階のおばちゃんがくれたんだっけ。

生の筍なんて、どうしていいかわかんなくて、おばちゃんに教わったんだっけ。

そうそう、こうやって、時間をかけて茹でて、一晩置いてえぐみを取るんだよね。

木造アパートは寒くって、筍を茹でてると段々暖かくなってきて嬉しかったのを覚えてる。

 

そんなことを思い出しながら、お鍋を抱きしめて、手のひらをあっためた。

そしたら、無性に嬉しくなっちゃった。

 

いえーい!

あったかい。春だ!

筍、美味しそう。ってか、絶対美味しい。

これ、どうするんだろう? どんな美味しいものになるんだろう…

気になる!

 

興奮冷めやらぬまま、着替えて、一階に下りて、料理長(かっこいい)に、

「あれ、筍ですよね!?」

って聞いてみた。

 

厨房の外のカウンターに座って、スマホをいじっていた料理長は、

「ああ、冷ましてるんですよ。」って言ったあと、あたしの顔をちょっと眺めて、

「なんですか?」って、超怪訝そうに聞いてきた。

 

しまった。

あたしったら、自分の興奮ペースのまま、空気を読まず振舞っちゃった。

おばさんがズンズン近づいてきて真顔で「あれ筍ですか」っていきなり聞いたら、

誰でも超怪訝な顔をするよね。ってか、怖いよね、普通。

 

「え? あ、いえ…」ってしどろもどろになってたら、

「いいですよ、2~3本持って帰っても」と、料理長。

 

え! マジで? くれるの? くれちゃうの、茹でたての筍?

んもー、かっこよすぎ、料理長っ。惚れてまうやんかー!!

 

って思ったけど、そこは、あたしも大人の女性ですから、

「あ、いえいえ、そういうことじゃないんです。春だなー、って思って嬉しくて!」

と、ぶりっ子風味の余裕をかまして、遠慮しておきました。

 

っつーかさ。

よっぽど物欲し気な顔つきしてたのね……あたし。

料理長、おばさんの迫力が怖くて「持って帰っていいですよ」って言ったのかもね…。

 

まあ、それはさておき。

 

「筍、何になるんですか?」って聞いたら、

「サラダです」だって。

 

えええっ? ちょっと意外。

風味を生かしたお浸し系かと思った。

どんなサラダ? 何サラダ?

きっと春っぽいお料理よね? なになに、一体?

 

って思ったけど、興奮しすぎて詰問口調になっちゃいそうなのが自分でもわかったので、質問はやめておきました。

 

「嬉しいー!たけのこ!

いや、食べたいとか欲しいっていう意味じゃなくて、春だなーって嬉しくて!」

 

と、再度、「物欲しくて言ってるんじゃないですよ」アピールをして、

「おつかれさまですー」って、帰ってきました。

 

翌日、八百屋さんが持ってきたお野菜には、スナップ豌豆やインゲンが。

そして、金髪のキッチン男子・天使くんは、大振りな鯛をさばいていました。

「お刺身の魚が、鯛に変わったんですよ」だって。

わーお!

 

春ですよー!

厨房には春が来てます。

厨房で働くあたしにも。

なんか、ワクワクしちゃうねっ!

筍が、一体どんなサラダになるのか、乞うご期待。

 

明日から、お仕事頑張っちゃうぞー。

 

 

おばさんバイト、ベトナムとマレーシアから戻った

 

こっちは寒いわね!

向こうは30度近い真夏だから、調子狂っちゃって。

しかも、こっち花粉のシーズンになってるしー。もー、びっくりよー。

 

こんにちわ。

海外に行ってたことをさりげなくアピールしたい、富士子(45歳)です。

 

よくね、外国から帰ってきた人が、日本のことを「こっち」って言うでしょ。

例:「こっちはみんな信号守るけど、向こうじゃ誰も守んないのよね」

これ、一度やってみたかったの!

うふふ、満足です。

 

ベトナムホーチミン、マレーシアのクアラルンプールに計10日間行ってました。

いやあ、行ってよかった。

かなり、パワーをチャージできた。

定期預金解約した甲斐がありました。

 

一応、旅のテーマを設定していたので、テーマに沿って感想を!

 

社会主義の国って、どんな感じ?(ベトナム

一週間の滞在ではよくわからなかったけど、知り合った日本人によると、かなり賄賂が有効らしいです。役人に権力が偏在している、ってのは社会主義っぽい。あと、あちこちにホーチミン氏の肖像画が掲げられてる。けど、反対勢力は暗殺されるっていうロシアの常識は、ベトナムにはないらしいよ(笑)。

 

イスラム文化圏って、どんな雰囲気?(マレーシア)

ヘッドスカーフ巻いた女性は多いし、祈祷スペースの案内も多い。けど、イスラム一色ではなくって、ヒンズー、アラブ、中国系など肌の色も多様。空港内の案内看板にいたっては、五ヶ国語表記です。多民族国家のエネルギーが渦巻く国でした。イスラム文化にどっぷり浸るなら、アラブに行った方がいいみたい。モロッコとか。ただ、マレーシアでも、ハラル認証の食品がコンビニに普通に売ってたり、その辺でお行儀悪く飲み食いしてるイスラム衣装の人を見かけなかったり、トイレでは左手でお尻を洗うためのホースが付いてて床は水浸しだったり…と、イスラムの慣習はそこかしこに見られ、小さく「おおー!」と思う場面は多かった。

ヘッドスカーフは、電車とかでよく見ると、スカーフの柄にさまざまな意匠が凝らされているし、巻き方もみんな違うし、ブローチやピンを使ってそれぞれにオシャレしてる。若いイスラムの女の子の集団を観察してると、みんながオシャレの工夫をしてて、見てて飽きない。「やっぱ、イスラムでも女子は女子じゃーん!」なんて、可愛く思っちゃうけど、ごく稀に、真っ黒なスカーフで顔も隠して目だけを出している厳格な教義のイスラム女性も見かけるので、「いかん、女子は女子、なんてのは、思い込みに過ぎん。色んな女子がいるのだ」と、襟を正す気持ちになったりします。

 

・経済成長率の勢いがある国って、普通の人々はどんな暮らししてるの?(共通)

乱暴に言うと、貧しいけど気にしてない感じ。豊かな人も貧しい人もいるのが当たり前で、「みんなと一緒じゃないと不安」っていう同調圧力はなさそう。ってか、食べるのに懸命で、同調圧力が働く余地がないのか。ホーチミンには、スターバックスマクドナルドもあって、屋台の数倍の値段でコーヒーやハンバーガーを売ってる。そこに行けるのはステイタスみたいだから、近いうちには、みんなが行きたがるようになるのかも。で、脱貧乏!っていう圧力が強く働くようになるのかも。

 

バックパッカーって人たちと接してみたい(共通)

10代のドイツ人少年、30代のインド系カナダ人、20代のゲイの中国人など、色んな人がいました。みんな、英語が上手かった。あたしに話しかけてくれるけど、何言ってるのかも大体わかるけど、あたしはしゃべれないんだよぅ!名詞の羅列と大げさな表情と身振り手振りで、何とか乗り切ったぜ。彼らは、世界中のあちこちを回ってて、旅が人生の一部になっているみたいだった。彼らの、新しい土地でちょっと緊張しながらもワクワクしている様子は、「今から美味しいものを食べまーす!」っていうような期待に満ちていて、同じ部屋にいる私にもワクワクが感染して、楽しかったです。

 

・アジアのおばちゃんを観察したい(共通)

観察っつってもねえ……。漠然としすぎて、何を見極めたかったのか、自分でもわからなくなってますが、感じたことはひとつ。

堂々としたおばちゃんって、ブレずに我が道を進んでるよね。「同調圧力? は? それは飯の種になるのか?」って感じ。屋台のおばちゃんは屋台の仕事にいそしみ、スタバやマックのステイタスは眼中になさそう。若作りとか、自分らしさの追求とか、生きがいを求めてとか、「そんなの考えたことないですか?」って聞いたら、鼻で笑われそう。いや、ホントのところはわからないし、凄まじい上昇志向は隠し持っているのかもしれないけど、「ウチはウチ、よそはよそ」っていう割り切りをモットーとして、頑固に堂々と生きてる感じ。日本で言うと、大阪のおばちゃんと似てるかも。

ちなみに、ベトナムの女性はとにかく働き者で、亭主は昼間から酒を飲んで遊んでるそうです。ガイドのベトナム人、ドクさんが言ってました。

 

・飲食業って、どうよ?(共通)

これも漠然とした興味だったのですが。ベトナムでは、どこに行ってもベトナム人が働いています。マレーシアは、外国人労働者の多い国でした。建築系は、バングラディッシュやラオスからの出稼ぎ。で、飲食業は、中級以上のクラスのレストランなら、殆どがミャンマー人。ガイドさんによると、ベトナムでもマレーシアでも、経営者は中国系が多く、ベトナムでは韓国人経営者が増えてきているそうです。ビジネス上手なのかしらね、やっぱり。ちなみに、新宿の飲食業に多い外国人労働者は中国人と韓国人ですが、目下急増中なのはベトナム人です。真面目で素直な人が多いそうで、ベトナム人採用を推奨する店舗も多いらしいです。

飲食業は、どこの国であっても、近隣の貧しい国からの出稼ぎが働きやすい職場です。学生やフリーターを頼みとする日本の飲食業は慢性的な人手不足に悩んでる。マレーシアみたいに、外国人労働者の受け入れを検討するのも無理はないのかも…とちょっと思った。個人的には、飲食業できちんと食べていける日本人が増えて欲しいと思うんだけど。だって、経営者は儲けてブクブク太ってるんだもん。外国人労働者が来たら、余計安くこき使うだけじゃん。(なんつって、これはまた別の話)

 

 

頭のいい人なら、テレビや本から異国の情報を手に入れて、頭の中だけで自由な旅が出来て、見識を広められるんだろうけど。

あたしは、実際に足を運んで、見たり聞いたりするのが向いているみたい。

普段使わない五感と頭を使ったので、全身の血の巡りが良くなりました。

旅って、いいもんだな。

 

新宿での居酒屋バイト、少し違ったまなざしで、取り組めるようになるかしら。

明日もバイトだー!

 

花粉に負けないで頑張るぞー

 

 

 

おばさんバイト、仕事を休んでベトナムへ

 

居酒屋厨房のバイトをお休みしている、富士子(45歳)です。

ベトナムホーチミンに来ています。

わーお!

 

色々と、思うところあってー…。

定期預金を解約して、チケット買っちゃいました。

 

来て正解!

なんたって、ベトナムはおばちゃんが素晴らしいです。

おばちゃんの純度が高い。

堂々と、皺とたるみと貫禄を身につけてる。

若く見せるとか、アンチエイジングっていう発想がない。

そのままで、十分な威厳を持っている。

おばちゃんとして、非常にクリアに存在してる感じ。

 

こっちも、この人らはベトナム戦争を経験してるんだな、って思ってみてるから、

おのずと、重みを感じちゃうんだよね。

ベトナム戦争があったのって、小学校低学年だったかなあ。

平和運動とか、ランボーとか、あらゆる方面に影響があったよ。

 

ブイビエン通り、というバックパッカー向けの安宿が並ぶ一角のゲストハウスで、

二段ベッドの8人部屋に宿泊。

まさかの一泊800円よ、奥さん!

 

中国、ドイツ、UK、イギリス、カナダ…いろんな国の人がルームメイト。

ま、ここでも、富士子(45歳)はダントツの最年長だけどね。

おほほほ。

みなさん、とっても親切ですのよ。

英語ができなくても、問題ナッシング。

 

肝心の、厨房バイトですが。

料理長は、拍子抜けするほどあっさり、お休みをくれました。

ちょっと、ショックだったわ。

 

今頃、「ああ、富士子さんがいれば助かるのになあ」、って思っていますように!

キッチン男子全員が、そう思っていますように!!

 

なんて言ってちゃダメよ、富士子。

こんな煩悩抱えてるから、卑屈なおばちゃんになっちゃうのよ!

 

どうしたら、ベトナムの中高年女性みたいになれるかしら。

 ひとまず、美味しいものをたくさん食べるところから真似します。

 

レッツゴー!

 

 

おばさんバイト、「感じ悪い」に凹む 

 

今朝も寒かった…。

ああ、また温泉に行きたい。

居酒屋厨房バイトの富士子です。

 

イベリコ豚のカットが出来ず、長いこと悩んでいます。

「肉を同じ大きさにカットする」ってのが、できません。

しかも、カットしたら串に刺さなきゃならん。

皮の部分は硬くて指しにくくって、無理に指すと形がグズグズに崩れちゃう。

 

その上、「1本の串につき肉の重量は35グラム」って決まってる。

ちっちゃく切りすぎると、たくさん指さなくちゃいけなくて、超不恰好。

大きく切りすぎても、おでんの串みたいなボリューム感が出ちゃって、不恰好。

なかなか、ちょうど良く仕上げられない。

 

もう4ヶ月目になるっていうのに…

毎回、泣きそうな思いで格闘してるのよ、奥さん!

 

で、今日もあったの。イベリコ豚。

もうね、始める前からため息。

3回ため息ついてから、袋を開けてたら…

 

料理長がスッとやってきて、

「富士子さん、イベリコは1本40グラム」

っつって、あたしの手元に秤を置いて、どっか行っちゃいました。

 

あちゃー!

重さがバラバラだったの、バレてた?

最近、肉のサイズが小さくて、どうも少なめの串がチラホラしてたの、わかってた?

 

さすがだわー、キッチン番長。

ごまかし効かないわー。

なんて、惚れ惚れしてる場合ではない。

 

料理長も問題に思ってたんだなー、と思うと、

いつまでたっても出来ない自分が、情けないやら恥ずかしいやら。

やっぱ、あたし、ダメなのかな。これくらいのことも出来ないなんて。

しかも、ずっと35グラムだと思ってたけど40グラムだったのか…。ダメダメじゃん!

 

でもね、こういう時こそ、スマイルよ、富士子(45歳)!

ヨガでもね、苦しいポーズの時には、先生が「スマイル、スマイル」って言うの。

表情が笑顔になるだけで、体も気分も変わってくるの。

苦しさを、乗り越えやすくなるのよ!

 

気を取り直して、笑顔で「はい」と良いお返事をして、作業に取り掛かりました。

 

そこへ、ちょっと馬の合わない先輩がやってきて…。

 

「あああー。富士子さんねえ。

最近、また、肉が小さくなっちゃいましたねー。

ちょっと、様子を見ないうちに、小さくなっちゃって。

エリンギも小さいですね。もっと量を指さないとー…うんぬん苦笑い」

 

ううう…。

今、料理長に指摘されたところだよう。

ってか、聞いてたじゃーん。

 

傷口が広がるのをぐっとこらえて、

「申し訳ありません」って謝ったら。

 

「え? なんか、感じ悪いなあ」

って、言われちゃいました。

 

えええええー!?

 

思わず、

「どうして?」

って聞き返しちゃった。びっくりして敬語も吹っ飛んだ。

 

「いや、冗談で言ったつもりだから」

 

えええええー?

わ、わかんなかったッス…。

 

「本当に申し訳ないと思ったので…気分悪くされたならごめんなさい」

って、また謝ってしまい、

 

「いやいやいやいや、もういいですもういいです」

みたいに言われてしもうた。

 

…………。

また失敗したよ。バカ富士子。バカバカバカ!

 

いやあ、馬の合わないとこがある先輩だから、

「申し訳ありません」って口で言いつつも、反抗的な感じが出てたのかな。

それとも、「申し訳ありません」っていうリアクションが重過ぎて、

かえって先輩に「言いすぎた感」を抱かせちゃったのかな。

(いや、正直、言いすぎじゃん、って思ったんだが)

 

そういうところが、バカなんだってば、富士子。

注意する方だって神経使ってるんだから、もっと負担にならないよう答えないと。

あーあ。

ほんっと、あたしの不徳の致すところです。

 

「仕事ができない」って、こういう軋轢も生むよね。

注意したりされたり、そのやりとり自体が、双方にとってストレス。

 

あああああ、「仕事ができる」ようになりたいよう!

 

 

それにつけても。

料理長、かっこいいです。

注意するときも、追い詰めない伝え方をしてくれる。

料理長って、いっつも、そう。

 

こういうことがあるたびに、あたしは昔のことを思い出す。

会社員時代、部下や後輩にどう接していたか。自分はどんな上司だったか。

あたしは、決して、料理長みたいじゃなかった。

 

料理長をかっこいいと思うたびに、取り消せない自分の汚点が蘇ってくる。

「かっこいい!」の直後に、「もうやだ、思い出したくない!」って思う。

 

もっと、料理長ができない奴で、あたしよりバカだったらいいのに。

優越感に浸ってられれば、悲しい自分と向き合わなくて済むのに。

 

なんつってな。

それじゃ何も変わらん。

 

きっと神様が、「自分を見つめなおせ、バカ富士子」って思って、

あたしをこのバイトに寄こしたんだと思う。

 

45歳にもなって、酷な運命だと恨めしいけど、せっかくだから頑張ります。

あたしも、人の気持ちがわかって、寄り添っていられる大人になりたい。

今からでも、間に合うのかな。

 

 

明日もバイトだー!

早起きしなきゃ。

 

 

 

おばさんバイト、シフト守らず出勤して反省

 

今日も新宿は雨でした。

外は寒いですね。

厨房は暖房が効いているので、ヒートテック愛用しているあたしは、ちょっと暑い!

 

昨日、久しぶりにバイトをお休みしました。

1月2日からぶっ通しでバイト、通算36日間、働き通しだったのよ、奥さん!

なもんだから、うっかり温泉に行ってきちゃった。

お金ないのに。

 

しかも、つい浮かれて、ビールも飲んじゃった!

売店で見かけた、揚げたてのさつま揚げとチーズの燻製が、超美味しそうだったのでおつまみにして、お風呂上りに一杯。

最高だわ!

気持ちよくなって、昼寝までしちゃいました。

 

しかし、こうなると、もうおっさんですよ。

おばさんですらない。

孤独なおっさんです。

 

 

そんな次第で思いがけず散財したので、今日もお休みだったのですが、急遽、働くことにしました。

こんなワガママ、普通は通用しないとは思うのですが…。

一応、料理長には、「日曜日はお休みでシフト出してますが、もし予定なかったら働いていいですか?」って、あらかじめ確認はしてあります。

 

実際、休んだところで特に予定がないのが常態化している富士子(45歳)ですから、今までも、「休みですけど、働かせてください」ってことが、何度かありました。

ま、寂しいっちゃ寂しいことなんですけどね。

そこはあんまり気にしてないです。

 

で、今日も、料理長に連絡して出勤させてもらったわけです。

元気に厨房に挨拶して、さっそく、お仕事に励んだのですが…。

 

ふと気がつくと、出勤していたはずの料理長の姿が見当たらない。

タバコも携帯もない。

あらん?

今朝、見かけたはずなんだけど…? 気のせいだった?

 

金髪のキッチン男子、天使くんに、

「今日、料理長っていませんでしたっけ?」

って聞いたら…。

 

「今日は出勤の人が多いから、昼間は休みにして夕方から来る、っつってましたよ。

あとよろしくー、って、出かけちゃいました」

だって。

 

あちゃー!

そりゃ、あたしが急に出勤したせいじゃない?

 

天使くんは

「いやいや、今日は仕込みが少ないからッスよ。大丈夫ッスよ」

って、言ってくれたけど…。

 

決められたシフトを守らないのって、やっぱり良くないッスよ。

って、おばさんは反省した。

 

あたし、ちょっとフリーダム過ぎた。ごめんなさい。

 

まあ、過去にも、キッチン男子が急に休んで、休みのはずだった料理長が出勤してる、ってことはありました。料理長は正社員だから、バイトが休んだらフォローしなきゃいけない立場なんだろうし、逆に、「人が多いからちょっと抜けるね」ってことも可能なんだろうとは思うのですが…。

 

でも、あんまり、料理長に甘えたらいけないよなー。

 

料理長は、あまりバイトの勤怠にうるさいことは言わない。

「バイトだから仕方がない」って思ってるかもしれない。

急に休まれても、できる範囲で自分がフォローして、文句がましいことは言わない。

あたしも含めて、バイトはみんな助かっているけれど…。

 

でも、これってさー。

一番助かってるのは、経営者だよね。

 

店長も正社員だけど、今年に入って一回も休んでない。

ホールの人手不足が深刻で、店長自ら、オープン前の準備をしてる。

なんだかなー。

 

料理長であれ店長であれ、正社員には正社員の役割があって、

その職務に専念できるように環境を整えるのが経営者の仕事だと思うんだけど。

バイトの穴埋めを正社員に負担させるのって、ちょっとわかんない。

一時的ならともかく、常態化してそうだもん。

良くないことよ、絶対。

 

 

なーんて、偉そうなことを書きましたが!

あたしに出来ることは…

シフトを守ることですね。はい。

 

今日は、急に出勤してごめんなさい。

 

明日も頑張ります!

 

料理長が味見させてくれた鶯宿梅、うまい!

 

新宿は、今日も寒いです。

冷たい雨 → 小粒の雪 → 冷たい雨。一日中、このローテーション。

体もすっかり冷たいです。早く春が来ないかしら。

冷え性歴45年の居酒屋厨房バイト、富士子(45歳)です。

 

 

先日、料理長(かっこいい)と天使くん(33歳)が、鶯宿梅(おうしゅくばい)の下拵えをしてました。平たく言うと、梅のペーストですが、実は手の込んだ逸品。

 

翌日ですね、出来上がった鶯宿梅が、ボールにたっぷり入ってるところに遭遇。

料理長(かっこいい)が、おしゃもじでグルグル混ぜてた。

つややかな梅肉色にほっそりした昆布の濃いグレーが混ざって、見るからに美味しそう。

あたりには、ほんのり梅の香り。

 

ボールの底から掬うように練られて、柔らかくたゆたっている鶯宿梅に見惚れてたら、料理長(かっこいい)が、

「食べてみます?」

って言ってくれました。

 

もう、やだわー! 食べたいって、何でわかったのかしら?

ほんっと、前から気になっていたんですよ、鶯宿梅。

名前からして、大物感がたっぷり。これで美味しくなかったら、詐欺ですよ。 

 

返事をするのももどかしく、ボールのふちについてるのを、早速指で取ろうとしたら

「ダメですよ。菜ばし使って下さい」

って怒られたわ。とほほ。

 

「どの辺を食べたらいいですか」

って聞いてみたら、

「昆布とわさびのところが美味しいですよ」

って、料理長(かっこいい)。

 

え?わさび?

昆布と一緒に、乳白色の細いものも練りこんであるけど…わさびだったの?

わさびも、こんなに細く刻んでたんですか?

料理長(かっこいい)ったら、いつの間に。 

 

で、食べてみたら!

美味しいのよ、これが!

 

すっぱさも甘さも残しつつ、旨みが濃いの。

お箸の先っちょで、いつまでもチビチビ食べてたくなる、後を引くお味。

お酒にぴったりだけど、白いご飯も欲しくなるね。

炊きたてはもちろん、少し冷めたくらいのご飯が良いと思う。

よくかむと甘くなってくる冷やご飯に、この梅の酸味と旨みが混ざったら絶対美味しい。

 

わさびそのものの、ピリッとした感じは強くないです。

昆布同様、わさびの味も、梅肉にすっかり溶け込んで、全体がまろやか。

 

マジかー!

予想以上。超うまいじゃーん!

 

鶯宿梅(おうしゅくばい)、っていう練り梅のことは知ってました。

お肌のきれいな美容アドバイザー、佐伯チズさんの「おススメのお取り寄せ」的な本に載っていたのです。福岡の料亭の品が紹介されていたんだけど、風流な名前が珍しくて印象に残ってました。

 

鶯宿梅は、古典の「大鏡」に出てくる逸話からとった言葉だそうです。→ 鶯宿梅

豊かな味わいの練り梅に、ぴったりの名前!

 

 名前は知ってても食べたのは初めてだからねー、感動しました。

良かった、このバイトしてて!

ありがとうございます、料理長(かっこいい)。

 

あたしは、野菜の串打ちをするのが仕事だけど、自分の分担が早く終われば、こうして他のお手伝いしたり、珍しいものを見聞きする機会も増えるわ。

自分の仕事で手一杯な毎日じゃ、もったいないわね。

もっとスピードを上げてがんばるわ!

 

あたしのモチベーションに火をつけた鶯宿梅。

福岡からお取り寄せも出来るし、あたしのバイト先でも食べられるよ!

みんな、是非、チェケラー!

 

料理長と天使くんに見惚れて反省

 

今日は立春だそうで、一番寒い日らしい。

新宿には、刷毛で掃いたような薄い雲が浮かんでます。

ピリッと寒い!

 

昨日の仕込みバイトは、料理長(かっこいい)と天使くん(33歳)、

そして、あたし富士子(45歳)の3人でした。

監督&4番打者&玉拾い、っていう組み合わせですよ。

あたしの戦力外っぷりが、浮き彫りになった数時間。

 

 

でもね、あたしの仕事も椎茸と獅子唐とアスパラ、エリンギ、くらいだったからね。

結構、楽勝。 って感じ?

 

早めに終わっちゃったので、「お手伝いすることありますか?」なんて、余裕かまして料理長(かっこいい)に聞いたりして、結構大人っぽくできました。

 

で、料理長(かっこいい)が肉の塊から切り出したタンやハツを、串に刺すのをお手伝い。これね、ちょっとやったことあるから大丈夫よ、あたし。

肉を切り終わった料理長(かっこいい)は、今度はおつまみの珍味の下拵えに入ります。

マットな色感の、乾燥させていない昆布を取り出して、細く切っていきました。

天使くん(33歳)は、大粒の南高梅をまな板に広げて、種を取り除いていきます。

この梅を裏ごしして昆布と和えると、甘すぎず酸っぱすぎず、美味しいペーストになるのですよ!鶯宿梅(おうしゅくばい)っていうらしい。

作り方はもっと複雑だけど、あたしは良くわかりません。

 

 

でねでね!この後が凄かったの。

あたしが、タンの串打ちをしているのが中央の位置とすると…

左側で料理長(かっこいい)が、上等の昆布を素早くカット中。

右側で天使くん(スピード王子)が、手早く梅の下処理中。

 

監督&四番打者によるダブル職人技を、独占鑑賞ですよ、奥さん!

これを僥倖といわずして何といおう。

 

ふたりとも、超かっこいいのよ!

天使くんの動きは、ビートの利いたパワープレイ系で、安定のスピードとリズムが特徴です。それでいて、丁寧なのが神業。

一方の料理長は、ものすごく静か。繊細。実はなにもしていないんじゃないか、っていうくらい、動きが穏やか。早いように見えないけれど、すごくきれいに何でも仕上げて、当然早い。もはや、魔法に近い。

 

 

つやつやの南高梅が、種を除かれて柔らかく光っている。

しっとりした昆布は黒のグラデーションがきれいで、細く刻まれると小さな塩の粒々がキラキラして見える。

天使くんや料理長が、静かできれいな手仕事で食べ物を作っていくのを見てると、幸せな気持ちになる。

 

うわーい! この席、すごくいいわー!

って、タンを串に刺しながら、大変満足な時間を過ごしました。

 

タンの後に、カシラもハツもあったのですが、鑑賞しつつ粛々と作業を進めまして、ようやく刺し終えたそのとき。

 

料理長(かっこいい)が、「飯にしよう」と天使くんに声をかけました。

「え、まだ途中ですよ?」と、キョトンとする天使くん。

キッチン男子たちは、キリのいいところまできっちり作業を終わらせるのが常なのに、天使くんは梅の種取りの真っ最中。

料理長だって、昆布を全部切り終えたわけじゃない。

だから、天使くんは、料理長の指示にちょっと驚いたみたいだった。

 

したら、料理長、

「うん、富士子さん待ちだったんで」

 

ええっ?

あたし待ち?

もしかして、この下拵え、あたしが時間かかるから、仕方なくやってた?

 

「すっ、すみません!」と慌てて謝る富士子(45歳)。

大急ぎで肉にラップをして、冷蔵庫に運びましたよ。

 

いやー。

独占鑑賞にふけってる場合じゃなかった…。

 

「早く終わんないかな」って、ずーーっと思ってたんだな…料理長(かっこいい)。

あたしがカシラやハツを串に刺すのを、「まだかなー」って思いつつ、見てたんだな。

 

全く気がついていませんでした…。

浮かれてました…。

すみません。

 

そんな昨日でしたが、今日もめげずにバイトです。

今日は、大久保くん(仮名24歳)のラストの日。

今までの御礼を伝えてきます。

 

行ってきまーす!

 

 

 

 

 

キッチン男子・大久保くんが辞めちゃう…のを、おばさんバイトは知らなかった

 

バイト先のみんなと馴染んできた!

とブログに書いたばかりの富士子(45歳)です。居酒屋さんの厨房で働いてます。

 

昨日、ビックリニュースが飛び込んできました。

キッチン男子・大久保くん(仮名・24歳)が辞めるんだって。

 

「えええーっ! またまたー。ネタでしょ!」って大声出したら、

「本当ですよ。あれ? 言ってませんでしたっけ」と、大久保くん(仮名)。

 

去年から決めてたんだって。明後日がラストだって。

知らなかった…。おばちゃん、聞いてなかったよ…。

 

送別会的なこと、やるのかな。おばちゃんも、何かしてあげたいな。

って天使くん(33歳)に聞いてみたら、

「個人的に飲みに行ってますね、みんな。俺も2回飲みました」だって。

 

そ、そっか。

そーだったのか。

大久保くん(仮名)、みんなに愛されてたからね。

きっと、気の置けない仲間の飲み会が、たくさんあったんだね。

良かった。

 

富士子(45歳)がバイト先のみんなと馴染んできた、っつーのは、

気のせいだったみたいだけどね。

おばちゃん、気にしないよ。

全然、気にしてない。

ほんとに。

 

 

うえーーーん!!!!

悲しいよーーう!!

(いろんな意味で)

 

 

大久保くん(仮名)と初めて会ったときのことは、今でも覚えてます。

バイト初日に、お店の前で、鍵が開くのを待っているとき。

集まっていたバイト君たちの中で、最初に声をかけてくれたのが大久保くん(仮名)。

「富士子さんですよね? よろしくお願いします」

 

若い子ばっかりで嫌われるかも、と不安だったあたしは、ものすごくほっとした。

 

その後も、緊張に緊張が重なってビクビクしてるおばさんバイトのあたしに、

何かと話しかけてくれて、色々教えてくれました。

 

あたしが先輩に怒られて落ち込んでると、

「俺も、よく怒られましたよ」、と自分の失敗談を披露。

 

新人バイトの饂飩くん(21歳)が失敗したときも、

「俺も、そういうことあったんだよ」、と似たような失敗話を披露してた。

 

「大久保くんは、いつもそうやってフォローしてくれるね。優しいね。」

って言うと、

「そんなんじゃないですよ。失敗話するの平気なんですよ俺。プライドないから。」

って、笑ってた。

なんかもう、超大人。あたしより、ずっと大人。

 

高校を卒業して、一流の水産加工会社に就職して上京したけど、自分の育った街でお店をやりたいっていう夢があって、驚くほどの高給だったけどスッパリ退職したんだって。

「ご両親は反対なさらなかったの?」って聞いたら、地元で長くお花屋さんを営んでいるお父さんが、ずっと応援してくれてる、って言ってた。

「自分の夢があるなら頑張ったほうがいい」って。ステキなお父さんだよね。

それから、お料理の仕事を始めて、2年余り。

 

今のお店では、自分の包丁を持って自分で研いで、肉も魚も捌いてる。

料理長(かっこいい)にも天使くん(33歳)にも頼りにされて、いつも名前を呼ばれている。ホールの子達とも仲がいい。

 

 

厨房で、ちょっとギクシャクした場面があると…。

当事者は、なんとはなしに、大久保くんに話をする。

不思議なことに、当事者二人が、他の誰でもなく、大久保くんに話をするのよね。

すると大久保君は、そ知らぬ顔で上手に話を聞いてあげるの。

すると、聞いてもらった方も気持ちが落ち着いて、事態は収束。すごいよね。

そんな大久保君の、相手の気持ちに寄り添って物事を丸く治めてしまう人間力を、あたしは心から敬服してます。→大人なキッチン男子

 

あたし自身、大久保くんがいてくれるとほっとする。

だから、いなくなっちゃうのは本当に寂しいけど…。

 

田舎に帰って、地元の飲食店で修行する、っていう大久保くんの志しを聞いて、

なんてしっかりしてる子なんだろう…って、眩しい気持ちになりました。

 

他の人の気持ちに寄り添うことができて、でも振り回されたりはしないんだなぁ。

将来を見据えて、ブレることなく、自分の人生を進んでいくんだなぁ。

大久保君らしくて、頼もしい。

それがわかって、すごく嬉しいです。

 

さすが大久保くん(仮名)!あたしの目に、狂いはなかったわ!

 

でも、やっぱり寂しいよ。

息子が独り立ちしちゃうのって、こんな気持ちなのかな。

嬉し寂しい。

 

がんばってね、大久保くん。

いつか、お店を開いて、彼女と幸せになってね。

おばちゃん、応援してるよ。

 

 

それにつけても、だ。

お別れ飲み会に誘われないどころか、辞めることすら知らなかった富士子(45歳)。

この人望のなさって、どうよ……

凹む、なんてもんじゃないですよ…

仕事で怒られるより、100倍ショック。

おばちゃん、ほんと、孤独よ。

ま、わかっちゃいたけどさー!

今この瞬間も、涙こぼしながら書いてます。うううっ。

 

 

明日もバイト。

大久保君とまかない食べるのも、あと数回。

せめて、ニコニコしてなくちゃね。 

元気出せ、富士子! 

大久保君は大丈夫だから、お前ががんばれっ!